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環境への負荷を最小にする技術

新しい対策技術や処理技術を考える

火力発電所蒸気による地域熱供給
火力発電所蒸気による地域熱供給

省エネルギー技術

自然エネルギー利用技術

 我が国の最終エネルギー消費量の4分の1は民生用であり,その内の3分の2は,冷暖房・給湯のために消費されています。これらの熱需要を,太陽熱や大気熱などの再生可能なエネルギーでまかなう研究が続けられています。
 冷房の必要な夏季には太陽熱のような温熱は余剰になり,逆に暖房の必要な冬季には雪のような冷熱は余剰となります。したがって,半年以上の蓄熱を効率良く行うことができれば,余剰の熱を必要な季節にそれぞれ有効に利用することが可能になります。このため,太陽光による温熱や大気放射冷却による冷熱を効率的に取得する技術,長期間効率的に貯蔵する技術,および効果的に利用する技術などについて研究を進めています。

自然エネルギー利用システムの概念
自然エネルギー利用システムの概念



新しい燃焼システムの開発

媒体循環型燃焼システム

 本システムは燃焼反応を酸化工程と還元工程に分け,両者を媒体である金属粒子の循環で結んだ,全く新しい概念の燃焼システムです。 酸化工程では空気で金属粒子を酸化し,熱を得ます。 酸化温度の制御によりNOxは発生しません。 一方,還元工程では酸化した金属粒子を燃料で還元します。 ここでもNOxは生成しません。還元の際に吸収される低温の熱は酸化時に放出されるため,燃料の直接燃焼より発熱量が多くなります。排ガスには水とCO2だけが含まれます。 温度を下げることで純粋なCO2が得られ,熱も常温付近まで有効に利用できます。

媒体循環燃焼法
媒体循環燃焼法

 現在,これらの特徴を活かした燃焼システムを実現するために,粒子や気体の反応特性,装置の流動特性,システム評価法に関する基礎的研究を実施しています。

加圧流動層燃焼システム

 加圧流動層燃焼は加圧条件下(10〜20気圧)で石炭等の燃料を燃焼させ,高温・高圧の排ガスによりガスタービンを駆動して発電するとともに,従来の蒸気タービンも利用する複合サイクル発電方式に利用される次世代の燃焼装置です。 従来の常圧の燃焼を利用する発電方式に比べ熱効率が高く,単位電気エネルギーあたりのCO2排出量が低くなるため,地球温暖化防止にも役立ちます。
 また,加圧流動層燃焼におけるNOxやSOxの効果的な抑制法を開発するために,加圧条件下での窒素酸化物の生成特性,炉内脱硫特性,伝熱特性等の基礎研究を行っています。

加圧流動層燃焼の概念図
加圧流動層燃焼の概念図
排煙処理(環境調和型燃焼システム)

 化石燃料を燃焼すると硫黄酸化物や窒素酸化物が排出されて,健康被害をもたらしたり,酸性雨となって地球環境を破壊します。 大型の燃焼装置から排出されるSOxやNOxを除去する技術は既に実用化されていますが,小型燃焼装置,特にディーゼル機関などから排出されるNOxの除去技術の開発は遅れています。

NOx除去システム
NOx除去システム

 当所では,ディーゼル排ガス等,酸素を過剰に含む排ガス中のNOxを除去する触媒の研究を行い,危険なアンモニアの替わりにアルコール類を還元剤に使用する,活性の高い触媒の開発に成功しました。 この触媒は,世界に先駆けて実用に供されることになり,エネルギー利用効率の高いコジェネシステム等の普及に役立つものと期待されています。



環境汚染物質の対策技術

ダイオキシン類生成メカニズムの研究

 ダイオキシン類は,廃棄物焼却等により非意図的に生成される物質で,発ガン性等の広い範囲の毒性による健康への影響が心配されています。 すでに主要な発生源である廃棄物焼却炉に対しては多数の対策技術が提案され実施されていますが,生成メカニズムに不明な部分が多いため,フライアツシュまで含めた排出抑制,廃棄物組成の効果など多くの問題を残しています。

ダイオキシン生成過程

 当所では,生成挙動の研究として,廃棄物に混入した有機塩素系化学物質の存在がデイオキシン類生成に与える影響を,客観的に評価するための研究を行っています。 また,ダイオキシン類生成の反応機構を明らかにするための基礎的な実験研究や,数値解析によりダイオキシン類の物性,反応特性などを理論的に明らかにする研究を行っている他,基礎的な反応特性の実験的測定も行っています。

酵素による環境汚染の防止

 環境中に排出される化学物質の中には,毒性が高くて分解され難く,しかも,生体内に濃縮・蓄積されやすいものが少なくありません。 我々の生活にとってかけがえのない環境を汚染から守るには,工場排水に含まれる有害化学物質の除去と,すでに汚染された環境の修復が重要です。
このため,酸素と生分解性高分子凝集剤による排水中の有害化学物質の凝集・沈殿処理と,そのスラツジを嫌気性徴生物で分解・無害化する処理法を研究しています。 また,環境中の自然の浄化作用を高めるため,微生物が生産する酸素を利用した環境に優しい浄化技術の研究も行っています。さらに,遺伝子組み替え技術を使って,より活性の高い酵素を大量生産する研究も行っています。

酵素による環境汚染の防止
廃水からの生物学的窒素除去と微生物のモニタリング

 廃水に含まれる窒素成分は河川湖沼,沿岸海域で,アオコや赤潮の発生を伴う"富栄養化"と呼ばれる環境汚染を引き起こす原因物質です。 こうした窒素成分は様々な徹生物の共同作業によって廃水中から取り除くことができます。廃水処理施設では微生物作用を利用した窒素除去を行い,環境中に放流しています。 しかし,窒素除去に関与するある種の微生物(特に硝化細菌)の活性を維持することは容易ではありません。硝化細菌は実験室での培養も難しく,その微生物学的な検討も長い間停滞していました。

アンモニア酸化細菌 Nitrosomonas sp. AL212株
アンモニア酸化細菌 Nitrosomonas sp. AL212株

 本研究では,硝化細菌を中心に窒素除去に係わる微生物の維持法を検討して処理の効率化を図るとともに,硝化細菌の中でもアンモニアを酸化する細菌の微生物学的および分子生物学的な基礎検討を積み重ね,これら微生物を最新技法でモニタリングすることを目指しています。

オゾンによる難分解性化学物質の分解

 オゾン(03)を用いた難分解性化学物質の分解技術については,部分的酸化(生物処理の前処理としてのオゾン酸化)と複合酸化(オゾンと他の物理化学的方法との併用)に大別できます。 分子構造中への酸素原子の導入により,大部分の化学物質はオゾン酸化により概ね生物分解性が向上することから,オゾンによる部分的酸化は生物処理に対して有効な前処理方法です。 複合酸化はオゾンを直接利用するものではなく,ヒドロキシルラジカルを始めとする活性ラジカル種を利用するものであり,この方法で難分解性化学物質の分解が促進されます。

 当所では,ニトロフェノール類や染料を対象として,生物分解性の向上や有機塩素化合物生成能の低減の観点から研究を行っています。

オゾンによる難分解性化学物質の分解
ディーゼル排ガス浄化触媒の開発

 燃費のよいディーゼル車は,産業活動や私たちの生活に不可欠な輸送手段ですが,窒素酸化物(NOx)と粒子状物質(PM)の排出量が多く,我が国の大気環境を悪化させている主要発生源になっています。 このため,ディーゼル車排ガス中のNOxとPMを低減できる処理技術の開発が早急に求められています。
 ディーゼルエンジン排ガスには酸素がたくさん残っているため,ガソリン車で実用化されている後処理法(三元触媒法)が適用できません。
 当所では,このような条件でもNOxを還元して無害なN2にすることのできる触媒を用いた新しい排ガス処理技術や,フィルタートラップ法などによるPM除去技術の開発に取り組んでいます。

ディーゼル自動車用排ガスコンバータ
ディーゼル自動車用排ガスコンバータ
光触媒による大気循環浄化

 温室効果気体,フロンおよび代替フロン,窒素酸化物および硫黄酸化物などの大気微量成分は,大気中で太陽光により直接・間接的に変換・分解反応を受け,最終的には環境から除去されます。
当所では,特に粒子状物質やエアロゾルが関与する不均一過程に注目し,大気汚染物質の分解過程と循環の研究を行ってきましたが,その過程で二酸化チタンと活性炭を主成分とする光触媒が,環境基準レベル(0.05ppm)のごく低濃度の窒素酸化物を除去できることを見いだしました。

光触媒パネル

 この光触媒は太陽光と降水によって機能の活性化および維持ができるので,屋外に置いた場合,人工的なエネルギーなしに大気環境を浄化でさることになります。 現在,光触媒法に基づく大気浄化材料の実際の,道路沿道における試験と地方自治体における評価が進められています。

非平衡プラズマによる環境汚染物質の分解

 ベンゼンやNOxなどの有害環境汚染物質は小規模の発生源から大気へ放出され,大形の処理装置では非効率となるため,小型で可搬な装置が要望されています。
 プラズマ状態とは電気的に中性な気体から解離したイオンと電子の集団がランダムに存在する物理状態を指し,化学的に安定な物質でも容易に活性化することができます。特に,非平衡プラズマでは気体の温度を上げずに電子温度だけを10,000℃にも上げることができ,エネルギー消費の少ない新規な小型装置として期待されています。

 本研究では,非平衡プラズマ状態で環境汚染物質を分解する技術開発を目指して,トリクロロエチレンやベンゼンなどの有害大気汚染物質(HAPs),窒素酸化物,フロンなどの有機フツ素化合物について,汚染物質の分解性能,微量副生物の分析,反応メカニズムの解明,プラズマ分解の装置開発などに取り組んでいます。

プラズマ反応装置
プラズマ反応装置の断面図
(a. バリアー放電型、及び、b. パルス放電型)


温暖化ガス対策

二酸化炭素の化学的有効利用

 CO2は,地球温暖化の主要な原因物質であり,その排出量を抑制することが強く要請されています。発電所,製鉄工場,化学プラントなどの固定発生源から大量に排出されるCO2を効率的に利用することができれば,CO2排出量の削減につながります。 また,CO2を利用する高効率の化学反応プロセスが開発されれば,将来,CO2を利用する新しい化学工業が構築できる可能性もあります。

 CO2の化学的有効利用法には様々な方法がありますが,当所では,(1)CO2と水素との反応による燃料や基礎化学品の合成,(2)CO2を用いる様々な有用化学品の合成,(3)CO2の性質を利用する炭化水素の脱水素反応について研究しています。

二酸化炭素の化学的有効利用
二酸化炭素の浅海溶解・重力沈降技術(GLAD)

 化石燃料の消費によるCO2の排出量は年間200億トンにも達し地球温暖化の主要因となっています。 海洋が有する膨大な吸収能力に着目し,CO2を人工的に海洋に固定する方法が提案されていますが,経済的にかつ確実にCO2を海洋に固定する技術の開発が望まれています。
 当所では,従来にはない新しい方法で,気泡のカと重力とを利用して効率良くCO2を深海に送り込むことができる我が国独自の方式(GLAD : Gas Lift Advanced Dissolution System)を提案しています。気体が持つ圧縮エネルギーと重力という自然のエネルギーを有効に使用できることから,極めて経済的な方法です。現在,基礎特性の把握と高効率化を目指して多角的な研究を進めています。

GLAD system


エコテクノロジーと当所の役割
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