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Global Environment Research Fund

環境庁地球環境研究総合推進費終了研究報告書

「オゾン層保譲対策技術の閑発と評価に関する研究」

平成5年度〜平成7年度

Development and Evaluation of Countermeasure Technologies for the Stratospheric Ozone Depletion

通商産業省工業技術院 資源環境技術総合研究所
物質工学工業技術研究所
名古屋工業技術研究所
環境庁国立環境研究所
九州大学
横浜国立大学
上智大学
北海道大学
東京大学
キングモンクト工科大学(タイ国)

 


目 次

エグゼクティプ・サマリー

要旨

第1章 研究の目的

第2章 フロン等分解技術の開発と評価に関する研究
 2.1 放電プラズマ及び熱分解によるフロン等の分解
 2.2 固体触媒による分解
 2.3 燃焼及び光反応による分解
 2.4 超臨界水による分解

第3章 フロンの光分解に関する研究

第4章 フロン等の回収・再利用・放出抑制に関する研究

第5章 フロン等の回収・分解のためのトータルシステムの開発と評価手法に関する研究

第6章 ハロン代替物質の開発と消火能力評価に関する研究

第7章 ハロン代替物質の環境影響(毒性)評価に関する研究

第8章 ハロン及びフロン等代替物質の環境影響(寿命)評価に関する研究
 8.1  ハロン及びフロン代替物質の大気中での挙動に関する研究
 8.1.1 0Hラジカルと代替フロン・ハロンとの反応速度
 8.1.2 フロン等の光分解
 8.1.3 ハロン及びフロン代替物質の大気中動態に関する研究

 8.2 ハロン及びフロン代替物質等の不均一化学反応に関する研究

第9章 結論

課題の構成

英文要旨

エグゼクティブ・サマリー

 本報告書は平成5年度より7年度まで行われた環境庁地球環境研究総合推進費のうちで、研究分野「A.オゾン層の破壊」の研究課題「A−2.オゾン層保護対策技術の開発と評価に閑する研究」について研究成果を述べた。

 第1章では、オゾン層破壊の小史を述べ、モントリオール議定書などの国際的規制の経緯とそれに呼応した対策技術の重要性を概説した。

 第2章では、フロン等分解技術の研究を述べた。分散的発生源に対しては放電プラズマ、触媒、並びに熱分解の手法を、また、集中的発生源では燃焼、光分解、並びに超臨界水の手法を検討した。多種類のフロン、代替フロンなどの分解について、システム性能の評価、生成物と副生物の組成解析、反応パラメータの解析、反応促進の考案、機構解明などを検討した。

 第3章では、フロンの光分解に関するタイとの国際交流研究について述べた。HFCの光分解及び光触媒分解反応の波長依存性と反応機構解明を行った。

 第4章では、フロン等の回収用吸着剤と吸着システムについて述べた。ゼオライトにマ ィクロ波照射による吸着制御をフロンと水蒸気の2成分系で行い、フロンの選択吸着の操作パラメータを抽出した。また、Y型ゼオライトに金属イオンをイオン交換すると吸着力が高まり、炭化物のこ酸化炭素処理で吸着量を向上できた。

 第5章では、フロン等の回収・分解のためのトータルシステムの開発と評価手法について研究した。全国の産業廃棄物焼却処理施設の調査から、潜在的なフロン処理容量を推定した。また、実用焼却炉でフロン分解を行い分解性能と安全性を確認し、処理に伴うダイオキシンの捕集方法として水とエチレングリコールをそれぞれ1本の吸収びんとする簡易なサンプリング技術の有効性を見いだした。

 第6章では、ハロン代替物質の開発と消火能力評価について研究し、分子中に(CF32N-基をもち、臭素の含まないポリフルオロアルキルアミンが消火能力が高いことを見いだした。また、計算機化学的によりフッ素系代替物質の消火メカニズムを考察し、トリフルオロメチルラジカル(CF3)が触媒的に燃焼炎中のHやOHラジカルを捕捉する新消火機構を提案した。

 第7章では、ハロン代替物質の毒性評価と熱分解生成物の研究を行い、2H-heptfluoropropane、 trifluoroiodomethane、 Perfluorotrialkylamineは遺伝子毒性や細胞毒性がなかった。また、これらの熱分解成生物についても、Perfluorotrlalkylamlneを除いて、遺伝子毒性や細胞毒性が認められなかった。

 第8章では、ハロン及びフロン等代替物質の環境影響評価に関する研究を述べた。代替物質の中では(C2F53NとOHとの反応佐は非常に低いが、フッ化アルコールとOHとは反応し分解速度パラメータを得た。また、(C2F53Nの光吸収スペクトルは近紫外域に吸収がなく対流圏中ては極めて長い寿命を持つことが示唆された。加えて、HFC-22の超高感度分析法で大気測定し、2-Boxモデル計算に基づいて生産・放出統計と比較し、HFC−142bについて高感度の大気濃度測定を可能とする研究開発を行った。

 さらに、3種類のハロン代替物質について不均一過程での反応性を比較した結果、(CF32NCF=CF2>(CF32NCF2CF2H>(CF33Nの光分解性序列を得た。また、前2者の物質から分解生成物を検出した。

 第9章は、これらの成果をまとめ結論とした。


【要 旨】

 本報告書は、平成5年度より平成7年度まで実施した環境庁地球環境研究総合推進費「A.オゾン層の破壊」のうち「A-2.オゾン層保護対策技術の開発と評価に関する研究」の研究成果であり、以下のように構成されている。

 第1章では、成層圏オゾン層破壊の科学的知見に関する略史を述べるとともに、フロンなどの製造全廃の政策的動向を概説した。また、科学的知見や政策に対応した代替物質の開発と評価並びに回収・分解の研究の意義づけを行った。また、本研究の研究項目と担当者の構成について述べた。

 第2章では、フロン等分解技術に関する研究を述べた。

 2.1では、コロナ放電による四塩化炭素の分解を試み、 BaTiO3等の誘電体に交流を印加してプラズマ状態を形成し分解を行った。また、反応試剤のオゾンと固体触媒と組み合わせによる分解反応、並びにコロナ放電と固体触媒の組み合わせによる分解反応も試みた。 熱分解では、フロンやハロンの熱分解で副生するクロロベンゼン顆、ペルフルオロカーボン類など微量ではあるが有害な物質に対する生成挙動を研究した。

 2.2では、反応条件が比較的温和で分解に要するエネルギーが少ないという利点を有する同体触媒を用いたフロンの分解技術について述ベた。本研究期間ではWO3/Al2O3-ZrO2触媒の組成比と触媒活性の相関性およびWO3/Al2O3-ZrO2触媒の更なる高活性化について検討を行った。 WO3担持量一定でAl2O3-ZrO2担体の組成比が異なる触媒および担体の組成比一定でWO3担持量が異なる触媒を調製し、各触媒を用いてCFC-115燃焼分解を行いCFC-115転化率を比較し、担体の組成比や触媒金属の担持量による活性の大きな違いは認められなかった。WO3/Al2O3-ZrO2触媒を用いてCFC-12の接触燃焼分解を行い、活性と反応温度との相関牲を調べ、 CFC-12は反応温度450℃以上で100%分解することがわかった。反応温度400℃以下ではCFC-12転化率の経時変化が認められた。この温度域では反応後の触媒にブタンの不完全燃焼により生じるコークの付着が認められ、これが活性劣化を引き起こす要因であると推察された。そこで、各種金属をWO3/Al2O3-ZrO2触媒に担持し、これら触媒のCFC-12燃焼分解における反応特性を調べた結果、 Ptを担持するとブタンおよびCFC-12いずれの転化率も向上が認められた。このときのCFC-12転化率の向上の度合いはブタンのそれよりも著しいことから、PtはCFC-12の直接分解にも関与しているものと思われる。そこで、Pt担持触媒を用いてCFC-12の直接酸化分解を行ったところ、活性劣化がほとんど認められず、PtがCFC-12の分解にも関与していることが明らかになった。

 2.3では、燃焼及び光分解による分解について述べた。燃焼法による分解処理では、バーナーを用いた予混合燃塊法で、四塩化炭素、 CFC-13、 CFC-14、CFC-116、ハロンー1301、HCFC-22、HCFC-123、HFC-134a、HCFC-141b、HCFC-142b、HFC-152a、及び1、 1、 1-トリクロロエタンの分解処理を行い、フロン濃度、化学量論比等の燃焼条件と分解率の関係を検討した。燃料としては天然ガスの主成分であるメタンを用いた。その結果、CFC-14は分解が極めて困難であったが、ハロン-1301では化学量論組成の時にハロン/メタン比がおよそ0.06以下、その他のCFCについてはフロン/メタン比がおよそ0.2以下の場合には、予混合燃焼法でほぼ完全に分解できることが分かった。一方、 HFC、 HCFC等水素原子を含んだ代替フロンに関しては、 HCFC-22、 HCFC-123、HFC-134aについてHCFC/メタン比がそれぞれ0.4、0.2、1.0以下の場合には完全に分解でき、HCFC-141b、HCFC-142bではHCFC/(HCFC+メタン)比が0.3以下、CH3CCl3では0.2以下の範囲内では完全に分解できた。HFC-152aの場合には、分解が極めて容易で、燃料が存在しなくても完全に分解できることが分かった。また、化学量論比を変化させた場合には、1.0〜1.05の範囲で分解率が最も高く、量論比がこの範囲から離れるに従って分解率が低下した。実用技術につなげることを目的として行った流動床焼却炉によるCFC-12の分解実験では、条件を適切に設定することにより、99.99%以上の分解率を達成でき、有害副生物の発生も十分抑えられることが判明した。

 紫外光による光分解法では、まず低圧水銀灯の185nmの光を用いて実験を行い、塩素化合物はフッ素化合物より分解しやすいこと、CFC同志ではフッ素の数の少ない方が分解しやすいことが分かった。また、254nmの光を用いた場合でも二酸化チタンを触媒として用いれば、CFCは分解しないがHCFCおよびHFCは完全に分解できることが分かった。

 2.4では、超臨界水による分解を述べた。超臨界水は380℃程度以下の比較的穏和な温度条件でフロンを加水分解するとともに、生成するハロゲン化水素を反応器内で中和無害化できるため、有害物質を排出しないフロン分解プロセスの開発を目指した基礎的な検討を行った。超臨界水法は高圧力下での操作であるが、ポンプにより容易に加圧できる液体フロンの分解には適用し易いと考えられる。そこで、流通式分解装置を使用して、主としてCFC-11、CFC-113を中心に分解条件の検討を行った。超臨界水条件の380℃では圧力とともに分解速度は増大し、アルカリをフロン中のハロゲンと当量以上添加することにより、分解率の向上とともに反応器の腐食を大幅に抑制できた。また、メタノールをアルカリと当量程度添加することにより分解率はさらに向上した。分解時の副生成物はC2以下の塩化フッ化炭化水素であった。 これらの結果から数分の滞留時間で99.9%以上分解できることが分かった。

第3章では、フロンの光分解に関するタイとの国際交流での研究成果を述べた。

 HFC152aを空気の存在下で、 254nm光と光触媒の4通りの組み合わせで分解反応を試みた。254nm光のみでは長時間照射しても分解ははとんど起こらなかったが、他の3つの方法では長時間照射することにより完全に分解した。分解反応はフロンに対して反応速度の一次式に従った。速度定数は、 254nm光と光触媒で0.37(hr-1)、 185nm光で0.360、 185nm光で光触媒で0.746であり、 185nm光と光触媒の組み合わせにより185nmのみの場合より2倍の分解速度が得られた。分解により炭酸ガスが生成するが、その生成速度は、 254nm光と光触媒では、フロンの分解速度に対応しているのに対して、 185nm光のみでは炭酸ガスの生成が少なかった.このことは185nn光のみの分解では中間体が生成して、これが分解しにくいこと、また光触媒では中間体が急速に分解することを示している。以上のことは赤外吸収スペクトルの測定からも支持され、 185nm光の分解では1500-2000cm-1に酸化物と思われる中間体の生成が観測された。

 第4章では、フロンの効果的な回収技術に資するために、マイクロ波を利用した吸着・脱着システム及び低濃度フロン回収用吸着剤の探索と製造の研究を述べた。

 吸着システムについては、吸湿性のゼオライトを用いてマイクロ波を照射しながらフロンの吸着脱離の挙動の検討を行い、以下の結果を得た。 1)吸着層温度はフロンの吸着に影響を与えない。2)マイクロ波の照射パワーが強いほどフロンの吸着が進行する。3)マイクロ波の照射時間はそのパワーで水が脱離する時間だけでよい。4)水の濃度が高い方が2段目で行われるフロンの脱離に有効である。以上のような結果と検討から、マイクロ波を利用した吸着脱離制御はフロンの吸着回収に有効であるとの結論を得た。

 吸着剤の開発については、ゼオライトのイオン交換処理、活性炭の熱分解炭素付着処理、炭化物の二酸化炭素処理、炭化物の水蒸気処理の4種類の多孔体の表面処理による高性能フロン吸着剤の開発について検討した。その結果、 Y型ゼオライトをイオン交換処理することによって、低濃度のCFC-12の吸着性能を大きく向上させうることがわかった。また、活性炭の熱分解炭素付着処理についてははとんど効果が認められなかったが、炭化物の二酸化炭素処理、水蒸気処理については極めて良好な結果が得られることがわかった。すなわち、低コストで市販のガス吸着用活性炭を上まわるフロン吸着性能の活性炭を製造することができた。

 第5章では、フロン等の回収・分解のためのトータルシステムの開発と評価手法に閑する研究を述べた。

 特定フロン等は、 1996年から製造禁止となるが、社会的に冷媒や断熱材として大量に蓄積されており、これらを廃棄段階で回収・分解することが必要である。横浜市で採用されたフロン回収・分解システムでは、既存の廃棄物回収ルートを活用して消費者、家電品製造業者、廃棄物処理業者などの関係者の役割分担と費用分担が定められており、このようなシステムが他の自治体や業界に普及すれば、フロンの回収・分解が促進されると考えられる。また、地域ごとでの回収・分解システムが経済的と考えられるが、アンケート調査からフロンの焼却処理が可能と考えられる産業廃棄物焼却処理事業所は全国に32カ所あり、潜在的に年間約2万トンのフロン頬を分解処理する能力があると推定された。

 炉の形式等の異なる4カ所の産業廃棄物焼却処理施設でフロン焼却分解実証試験を行い、いずれの施設でも特定フロン等をほぼ完全に分解でき、排ガス中の一般規制項目や揮発性有機塩素化合物の濃度は、基準値以下で問題ないことが確認できた。排ガス中のダイオキシン類は、いずれも都市ごみ焼却施設排ガスの現状より低く、とくに2施設ではUNEPのガイドライン値も大幅に下回っていた。

 フロン焼却排ガス中のダイオキシン類は、水とジエチレングリコールの吸収びん各1本で捕集でき、厚生省の定めたサンプリング方法を簡易化できた。また、難揮発性全有機ハロゲン化合物(NVTOX)を簡易に高感度で測定する方法を開発し、都市ごみ焼却施設も含めて測定したところ、ダイオキシン類濃度とある程度の相関があることがわかった。

 第6章では、ハロン代替物質の開発と消化能力評価に関する研究を行った。

 オゾン層を破壊する恐れのない代替ハロンとして、数種のペルフルオロアルキルアミン系化合物を電解フッ素化法により合成した。また、それらの消火性能評価を、 Box法、層流燃焼速度の測定、カップバーナ法の3種類の方法により行った。その結果、ペルフルオロアルキルアミン系化合物には、ハロン1301(CF3Br)には及ばないものの、代替ハロンとして米国で市販されているFX200(CF3CFHCF3)よりは優れた消火能力があることがわかった。 また、オゾン層破壊の原因となる臭素を含まない代替ハロンの消火メカニズムを、非経験的分子軌道法により考察した。その結果、トリフルオロメチルラジカルの関与する新しい消火メカニズムが明らかとなった。このトリフルオロメチルラジカルの閑与する新しい消火メカニズムは、新しい代替ハロンの分子設計の指針となり得ると考えられる。

 第7章では、ハロン代替物質の毒性等の環境影響評価の研究を述べた。

 ハロン関連化合物の毒性を培養細胞を使って迅速、簡便に行うスクリーニング法を開発し、特定ハロン及びハロン代替物質の細胞毒性と遺伝毒性を調べた。 Halon 1301には弱い遺伝寺性が認められた。米国で市販されているハロン代替品の2H-Heptafluoropropane(商品名;FX200)は5%以下では細胞毒性も遺伝毒性も示さず、 8%レベルで弱い細胞毒性と遺伝毒性を示した。Halon 13001 (商品名; TRIODIDE)では細胞毒性が認められたが、遺伝毒性はなかった。フッ素系アミン頬のハロン代替物質のうち、 Perfluorodinethyl-vinylamine以外の3物質はいずれも細胞毒牲、遺伝毒性共に示さなかったが、Perfluoro-dimethylvinylamineは 5%濃度で比較的強い細胞毒性を示し、弱いながら遺伝毒性も認められた。5%濃度の2H-Heptafluoropropaneを熱分解して得られたガス状生成物では細胞毒性も遺伝毒性も検出されなかった。一方、 2.5%濃度の Perfluorotriethylamine を熱分解して得られたガス状生成物は強い細胞毒性を示したが、遺伝毒牲は示さなかった。

 特定ハロン及びハロン代替物質の熱分解挙動を調べた結果、臭素原子やヨウ素原子、二重結合を有する物質が容易に熱分解した。熱分解で生成する有機成分についてはガスクロマトグラムでみる限り、種類も少なく、生成量も少量であった。有機生成物のうちで同定できたもの、あるいは構造を推定できたものは半数以下であった。フッ素原子についての物質収支からみると、フッ素原子の大半は無機化していると考えられ、有機物に変換されるフッ素原子はわずかであった。臭素原子を含む化合物でも生成物のほとんどに臭素原子を含まれておらず、ヨウ素原子を含む化合物ではヨウ素のはとんどが元素状ヨウ素として回収されている。 無機化したフッ素原子はフッ化水素として検出された。

 第8章では、ハロン及びフロン等代替物質の寿命等の環境影響評価について述べた。

 8.1は、代替ハロン・フロンの環境影響の中でOHラジカルとの反応牲、光分解牲、並びに大気濃度の測定に関連する研究成果である。

 8-1-1では、対流圏での均一反応による代替フロン・ハロンの寿命を見積もる目的で、OHラジカルとの反応速度定数を測定した。反応速度の測定は、硝酸ガスの193nm光分解でOHラジカルを生成し、レーザー蛍光法でその減衰を測定する方法を採った。遅い反応速度を測定する目的で、セル内の乱流拡散による壁での減衰を避けること、硝酸ガスとの反応を避けるために低濃度とすること、光分解で生成したNO2との反応を避けるため光分解量を抑えることなどの工夫により10-16cm3 molec-1 sec-1までの速度常数が求められるようになった。フッ素置換のアルコール顆や(C2F5)3Nなどの反応速度を測定し、それぞれおよそ10-13のオーダー、および6x10-16cm3 molec-1 sec-1以下の値を得た。フッ素置換アルコールのOH反応寿命はそれぞれ10年前後および200年以上と推定される。

 8-1-2では、対流圏での光分解反応による代替フロン・ハロンの寿命を見積もる目的で、既知のフロン・ハロン頬の吸収スペクトルのレビューと、未知のものについての測定を行った。臭素を含む化合物は200〜240nmに10-18cm2の吸収を持ち、 300nmまで尾を引いているが、塩素化合物の吸収は弱く、フッ素化合物の吸収は極めて弱い. (C2F5)3Nの系列では他のフッ素置換飽和炭化水素よりはるかに強い吸収であるとはいえ、その例えば220nmでの吸収断面積は10-21cm2であり、対流圏での光分解は事実上起こらない。また、光分解生成物はBrやClのハロゲン原子であることが確かめられた。

 8-1-3では、 HCFC-22のバックグラウンド濃度を高精度で測定する方法を開発し、標準ガスや校正法も確立し、 1980年以来の保存されていた大気試料の分析を行った。その結果、1980-87年の間は5. 2ppt/yrの増加であったのが1988-93年には10. 3ppt/yrの増加率に倍加した。特に北半球での濃度増加が著しく、代替フロンとしての消費が増えたことを反映している。 1988年以降はモデル計算よりも測定値の伸びが上回っており、統計値の1.2倍の排出があると考えられる. HCFC-142bなどの低温浪縮・ CGC-KS法による分析方法を開発し、都市域での大気中濃度を測定し、人間活動との強い相関を見いだした。代替フロンの使用はフロンを全廃する上でやむを得ないが、温暖化係数も大きいので経年変化を正確にモニターしていくことが必要である。

 8.2では、ハロン及びフロン代替物質等の不均一系化学反応について述べた。

 ハロン代替候補物質である3種類のフルオロアミン[N(C2F5)3、 (CF3)2NCF2CF2H、(CF3)2NCF=CF2]について、環境中の粒子状物質上の不均一反応による除去過程を評価するために、種々の粒子状物質上の不均一反応の速度と生成物を検討した。その結果、いくつかの粒子状物質上で(CF3)2NCF2CF2Hまたは(CF3)2NCF=CF2 の不均一光分解の進行することがわかった。しかし、いずれの反応も気相反応による除去に比べて重要でない、と推定された。 N(C2F5)3では、検討した粒子状物質のいずれについても気相濃度の減少は認められなかった。ただし、対流圏寿命が非常に長いと推定されていることを考慮すると、実験誤差のために固体粒子上の不均一反応の寿命への寄与を否定できない段階である。検討した3種類のフルオロアミンの光分解反応性の高さは、 (CF3)2NCF=CF2 > (CF3)2NCF2CF2H > N(C2F5)3の順であった。分解反応生成物はN(C2F5)3、 (CF3)2NCF2CF2Hに対して検出されたが、 N(C2F5)sからの(C2F5)2NCF=CF2生成以外は未同定である。

 最後に、第9章は第1章から第8章についてのまとめを行い、結論とした。


課題の構成


        (課題代表者)資源環境技術総合研究所     水野光一

(1)フロン等分解技術の開発と評価に閑する研究

       (研究代表者)資源環境技術総合研究所     水野光一

  通商産業省 工業技術院 資源環境技術絵合研究所
        大気圏環境保全部              田森行男
                保全技術研究室       櫛山 暁・小林 悟・
                              尾形 敦
        統括研究調査官               水野光一
        水圏環境保全部 水質計測研究室       富永 衛・今川 隆
        熱エネルギー利用技術部 燃焼システム研究室 城戸伸夫・竹内正雄
  通商産業省 工業技術院 物質工学工業技術研究所
        基礎部                   立矢正典
                反応化学研究室       近藤重雄・徳橋和明
        化学システム部               佐藤眞士
                システム解析研究室     中根 尭・菅田 孟・
                              佐古 猛・中澤宣明・
                              大竹勝人
                プロセス構成研究室     田中啓一・久永輝明
(委託先)
  九州大学  工学部                   若林勝彦・長田秀夫・
                              岸田昌浩

(2)フロン等の回収・再利用・放出抑制に関する研究

       (研究代表者) 資源環境技術総合研究所    水野光一
  通商産業省 工業技術院 資源環境技術総合研究所 
        大気圏環境保全部              田森行男
                保全技術研究室       小林 悟
        統括研究調査官               水野光一
        熱エネルギー利用技術部           北川 浩

(3)ハロン代替物質の開発と消火能力評価に関する研究

       (研究代表者) 名古屋工業技術研究所     阿部 隆

  通商産業省 工工業技術院 名古屋工業技術研究所
        化学部     フッ素化学研究室      阿部 隆・林 永二・
                              小野泰蔵・西田雅一・
                              深谷治彦・早川由夫・
                              寺沢直弘
(委託先)
  上智大学  理工学部                  猪俣忠昭・高橋和夫

(4)ハロン代替物質の環境影響(毒性)評価に閑する研究

       (研究代表者) 国立環境研究所        安原昭夫
  環境庁   国立環境研究所
        化学環境部   計測管理研究室       安原昭天
                化学毒性研究室       彼谷邦光・白石不二雄

(5)ハロン及びフロン等代替物質の環境影響(寿命)評価に関する研究

 1)ハロン及びフロン代替物質の大気中での挙勤に関する研究
       (研究代表者) 国立環境研究所        井上 元
  環境庁   国立環境研究所
        大気圏環境部                井上 元・Xue Yanqun
  (委託先)
  東京大学                        富永 健・巻出義紘
  北海道大学                       川崎昌博

 2)ハロン及びフロン代替物質等の不均一系化学反応に関する研究
       (研究代表者) 資源環境技術総合研究所    竹内浩士

  通商産業省 工業技術院 資源環境技術総合研究所
        温暖化物質循環制衝部 光利用研究室     竹内浩士・小池和英・
                              忽那周三

(6)フロン等の回収・分解のためのトータルシステムの開発と評価手法に関する研究

       (研究代表者) 横浜国立大学工学部      浦野拡平
  環境庁   国立環境研究所
        地球環境研究グループオゾン層研究チーム   中根英昭
  (委託先)
  横浜国立大学工学部                   浦野拡半

(7)フロンの光分解に閑する研究(国際交流)

       (研究代表者) 物質工学工業技術研究所    田中啓一
  通商産業省 工業技術院 物質工学工業技術研究所
               プロセス構成研究室      田中啓一・久永輝明
  タイ国King Mongkut's 工科大学              Benchang Sanchar

 


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