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NIREニュ−ス1998年12月

風力選別機の開発とその評価

素材資源部 伊藤信一

1.はじめに
 風力選別と廃棄物の関係は,大きく分けて2つの時代的流れがあると考えられる。1つは,ローマクラブが「成長の限界」を報告した1972年前後である。その頃まで風力は主として分級操作に適用されてきたが,これを廃棄物の選別単位操作として取り込むという試みが数多く成された。

 2つめは,ローマクラブが「成長の限界を超えて」を報告した近年である。近年は,ストレートカラム型の風力選別機が,多くのリサイクル現場における選別・分級プロセスで活躍している。

外国における風力選別機による固体の選別可能性に関する研究報告は,ここ10年で暫増の傾向にある。初期の対象は主として都市廃棄物であった。TaubとPeirce1)は,風力選別機カラムを工夫して,ジグザグ型や積層逆三角型を提唱し,都市廃棄物にこれらの選別機を適用する場合,紙の存在割合が選別成績に多大に影響すると報告した。ジグザグ型風力選別機はその他,ガラスと紙の選別可能性などに検討されたが紙のからみつきなどで満足な選別成績が得られなかった。その後Duke大学のジグザグ型風力選別機の研究グループは,それが都市廃棄物の選別に不適合であるとした。

 風力選別機による固体選別の基礎研究としては,Vesilind,Peirce等2)の不規則形状粒子の終端速度測定とその解析があり,アルミニウムとプラスティックの終端速度は広い粒度範囲において,オーバーラップしており,風力で,それらの完全な選別は不可能と結論した。

 その後,Stessel,Wolf,Peirce等により,風力選別機の都市廃棄物への適用研究は続けられた。1990年にEverett等は3),2.5cm以下のサイズでアルミニウム,プラスティック,紙を含有する模擬都市廃棄物を実験試料とし,ストレート,ジグザグ,ザグザグおよび積層逆三角型カラムの性能比較を行い,このうち,積層逆三角型が選別成績および選別条件安定性の点で最も良い成績を収めると結論した。

 日本においては,昭和40年代後半に,ジグザグ分級機を用いて,新聞紙と厚紙,およびプラスティックのシートとフィルムの選別を検討した実験例ならびに,ルーバ分級機を用いてプラスティック相互選別を検討した実験例がある4)

 その後,日本における風力選別の研究は途絶えたが,廃棄物問題が顕在化してきた1990年代に,リサイクル現場においてストレートカラム型の風力選別機が活躍しはじめた5)。同時に,風力選別の効率化研究も行われるようになった6),7)

 素材プロセス研究室では,風力選別機性能アップのための研究を継続して行っているが,ここでは,当研究室で開発した加速型カラム選別機とその性能試験結果を紹介する。
2.加速型カラム選別機
 図1に当研究室で開発した風力選別実験機の代表例を示す。内径60mmのアクリル樹脂製のカラム内にベンチュリーやオリフィスが設置され,下方から送風された風を加速する構造となっている。このため,当研究室で開発した風力選別機を加速型カラム選別機と名付けた。

3.実験試料
表1に用いた実験試料である銅とアルミニウムの仕様を示す。いずれも円盤形である。
表1.実験試料仕様 比重:銅8.92,アルミニウム2.70
直径×厚み
(mm)

(gram)
アルミニウム
(gram)
9×0.5 0.284 0.083
9×1.0 0.577 0.172
6×0.5 0.128 0.037
6×1.0 0.265 0.079
3×0.5 0.035 0.010
3×1.0 0.071 0.021
4.ストレートカラムと加速型カラムの選別性能比較
 図2は,表1に示す試料を100枚ずつ,合計1200枚をカラムに投入し,選別時間を20秒と設定して選別試験を行った結果で,風速と分離効率との関係を示したものである。右方に,ストレートカラムおよび加速型カラムの構成を示す。オリフィスは,高さ5mmで内径が52mmと56mmの両者を検討した。なお,選別効率は次式に示す。





ここで,
E : 選別効率(%)
: アルミニウムの供給量(枚)
: アルミニウム浮揚回収量(枚)
: 銅の供給量(枚)
: 銅のメッシュ上残留回収量(枚)

 ストレートカラムの場合,風速が12.3m/sまでは風速が速くなると徐々に分離効率が増大し,およそ70%に達する。12.3m/sを越すと急激に分離効率が増大し,12.7m/sではおよそ100%に達している。一方加速型カラムでは風速の増加とともに急激に分離効率は増大し,風速11.7m/sでは,ほぼ100%に達している。また,両カラムとも風速13.1m/s付近から分離効率が減少しはじめているが,これは風速が速すぎ銅をも浮揚させてしまうためである。加速型カラムのオリフィス内径が52mmと56mmでは,さして風速と分離効率の関係の結果に影響がないようであるが,風速が選別には速すぎる13.1m/s以上では,オリフィス内径が小さいほど銅をも浮揚させてしまう効果があり,分離効率の減少の程度が大きくなっている。このように,ストレートカラムより加速型カラムの方が遅い風速でも100%近い分離効率が得られている。また,ほぼ100%の分離効率を保持しうる風速範囲が,ストレートカラムでは12.7m/s〜13.0m/sと短い範囲であるのに対し,加速型カラムのそれは,11.7m/s〜13.0m/sと長くなり,風速に対して選別効率が鈍感となっている。これらの結果は,加速型カラムがストレートカラムと比較して分離操作には優れていることを示唆している。

 図3は,同一試料を実験試料として,風速を12.5m/sとした場合の選別時間と分離効率との関係を示したものである。図の右方にカラム構成を示す。

ストレートカラムでは,時間の経過とともに分離効率は増大し,120秒に至ってほぼ100%の分離効率を得ている。1個のオリフィスを設置した加速型カラムでは,ストレートカラムと同型のカーブを描いているが,ほぼ100%に達する時間がおよそ60秒と短縮されている。この傾向は,オリフィスが2〜4個の場合も継続し,ほぼ100%に達する選別時間はそれぞれ,20秒,10秒および10秒となり,オリフィスの数が増えると分離時間が短縮されている。ただし,2個と3個の場合は,選別時間を増大しても分離効率が減少しないのに対し,4個の場合は30秒を経過すると選別効率が減少し始めている。また,2個と3個の場合は,選別時間に対して分離効率は鈍感で,120秒までほぼ100%の分離効率を得ている。これらの結果は,加速型カラムがストレートカラムより選別に優れていることを示唆すると同時に,オリフィスの最適設置個数があることを示唆している。
5.まとめ
 風力選別機として,加速型カラム選別機を開発し,円盤形の銅とアルミニウムを模擬試料として,その選別性能試験を行った結果次のことが明らかとなった。
  1. 3〜9mmまでの3倍のサイズ範囲をカバーしてほぼ100%の選別効率が達成された。
  2. ストレートカラムに対し,加速型カラムでは遅い風速でほぼ100%の分離効率が得られると同時に,その風速範囲が広く,選別に有利である。
  3. ストレートカラムに対し,加速型カラムは短時間でほぼ100%の分離効率が得られる。今までの最適条件では,およそ1/12時間短縮できる結果となった。
 以上の結果のように,加速型カラム選別機は,広いサイズ範囲をカバーして比重の異なる固体の選別可能性を示すとともに,ストレートカラム型風力選別機と比較して10倍以上のランニングコスト安が見込まれる。

 今後は,比重差の接近した固体間選別を検討するとともに,実試料についても検討してゆく予定である。 
参考文献
1) Taub, B.and Peirce, J. J., J. Energy Eng., 109(2), 74- 87(1983)
2) Vesilind, P. A., Peirce, J. J. and Wolf, B., J., Conserve. Recycl. 5(4)209-213, (1982)
3) Everett, J. and Peirce J. J., Conserve. Recycl., 4, 185- 202, (1990)
4) 伊東良太,環境創造,Session3, 3-2-1, (1972)
5) 例えば,リーテムK.K.,会社案内 (1993)
6) 荒井 怜その他,資源素材学会'94(春季大会)  (その後'98まで7件発表)
7) 吉田卓弥その他,廃棄物学会論文誌,9, 2/3, 95-103 (1998)

素材資源部 伊藤信一


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