NIREニュ−ス1999年9月
凝集−ゼオライト吸着法による染色廃水中アンチモンの廃水処理
統括研究調査官 冨永 衞
- 1.はじめに
- 近年の産業活動の発展と新たな産業の出現により,特異的な環境汚染が生じています。この環境汚染の改善を目指して,平成5年3月に水質環境基準が見直され,25項目の要監視項目及びその指針値が新たに設けられました。この中で重金属類はアンチモン(Sb),モリブデン(Mo),ニッケル(Ni)が指定されています。Sb及びNiについては,その生態への毒性が明確でないことから,平成11年2月に指針値が削除され,指針値の見直しが行われています。この際の環境基準の見直しにより要監視項目は22項目が指定されています。しかし,Sb,Moは水中では多様な化学種として存在し,その存在形態によって毒性が異なることが指摘されています。また,これらの金属は従来重金属類に対して行われてきた中和剤と凝集剤の添加による,いわゆる凝集沈殿法などの処理法では,低濃度まで処理することは難しいとされています。このため,これらの金属が環境基準に取り上げられ排水規制が行われた場合には,これらの金属に対する的確な処理法がなく,早急に処理法を開発する必要があります。しかし,これらの金属を環境へ排出している産業は,無機顔料工業や染色工業が主で,中小規模です。これらの産業では,排水処理装置設置のための敷地や運転のためのコストをできるだけ小さくする必要があり,このための技術開発が必要です。これらの産業における排水処理の現状は,重金属や有機物に対して凝集沈殿法や活性汚泥法が行われていますが,Sb及びMoはほとんど処理されずに環境へ放出されています。現状の凝集沈殿法で,処理しようとすると,大量の凝集剤の添加が必要になり,大量のスラッジが発生し,その処理にコストが掛かることになります。このため,中小規模の工場でも維持できる低コストで,コンパクトな処理装置の開発が望まれています。
従来法では処理が難しいこれらの金属に対して,天然ゼオライトによる吸着処理を考えてみました。水処理では,天然ゼオライトの使用は吸着能が他より劣るためほとんど使用されることがありませんが,既存の凝集沈殿法や活性汚泥法で処理された排水では,共存物が少なくなり,ゼオライトでも吸着処理が可能になる可能性があります。この際に,少量の無機系の凝集剤を加え,SbやMoをあらかじめ非常に弱い吸着で凝集させておけば,少量の凝集剤をゼオライトに吸着させることで,ゼオライトへの吸着はより一層有効になると思われます。
本稿では,凝集剤による凝集とその後のゼオライトによる凝集剤の吸着を結合した処理法についてバッチ試験による基礎的な実験と,その結果を基に連続吸着処理実験装置を試作して,染色排水中のSbを対象に本処理法の実用の可能性を検討してみました。
- 2.Sbの吸着処理実験結果
- 2.1 連続吸着処理実験装置の試作
- Sb標準液及び活性汚泥法による処理後の染色廃水を使用してバッチ試験によるPAC(ポリ塩化アルミニウム)の量,ゼオライトの量,pH値などを検討し,バッチ試験による最適処理条件の下,染色廃水(Sb0.4ppm)にPAC溶液を添加してpH7に調整した後,ゼオライトを添加してバッチ法による多段処理を行ったところ,図1に示すように,一段処理で約80%以上の除去率が得られました。この実験結果を基に,連続して処理実験を行うための実験装置を試作しました。本装置では,廃水とPAC溶液を混合槽で等量混合し,そのオーバーフロー液をpH7〜8に調整,水酸化アルミニウムのフロックを作り,排水中のSbを吸着,凝集させます。この懸濁液をゼオライトカラムに流し,フロックを吸着処理します。処理流量は100ml/minです。実験装置のフロ−を図2に示します。


- 2.2 吸着処理実験
- 未使用のゼオライトを使用し標準液及び染色廃水中のSbの除去を検討した結果,いずれも高い除去率が得られたことから,本システムによるSbの除去が可能と考えられます。未使用のゼオライトを使用し,最大廃水処理量を求めるため,連続して染色排水を流して,処理を行いました。その結果を図3に示します。本装置仕様による排水処理目標値を0.1ppmとすると,約20Lまで廃水処理が可能です。しかし塩酸で再生した再生ゼオライトを使用し同様の実験を行った結果,未使用のゼオライトに比べると処理量が格段に低下します。染色排水の連続処理を可能にする洗浄方法の検討が必要です。

- 2.3 ゼオライトの洗浄
- ゼオライトを再生するため,塩酸,硫酸,硝酸を使い,標準液中のSbを吸着処理したゼオライトの再生洗浄を行った結果,塩酸が,硝酸,硫酸よりもゼオライトに吸着したフロックの除去効果が大きいことが分かりました。0.5M-2.0Mの塩酸で洗浄し,ゼオライトの洗浄溶液中のSb濃度について検討した結果,塩酸濃度が1M以上の時,Sbはほぼ100%回収されます。しかし,染色廃水を処理したゼオライトを0.5M-4.0Mの塩酸で洗浄した場合は,洗浄水の塩酸濃度の増加により回収率は増加したが,100%回収することはできませんでした。
染色排水を流したゼオライトを再生する際の最も適した逆洗方法を見つけるため,数種の洗浄溶液の組み合わせを検討してみました。6Mの塩酸(200ml)で30min,そして1%NaCl+0.1%NaClO溶液(200ml)で30minさらに純水(200ml)で30minという逆洗法が最も再生後の吸着能が高くなりました。さらに,洗浄前に染色排水を流し,6Mの塩酸(200ml)で30min,そして1%NaCl+0.1%NaClO溶液(200ml)で30minさらに純水(200ml)で30minという洗浄溶液の組み合わせで,洗浄後,さらに,染色排水を流し続けましたが,ゼオライトの吸着能はほとんど変わりませんでした。
2.4 洗浄溶液と気泡によるバブリング
- 洗浄前に染色廃水を流し,カラム下方より気泡によるバブリングを行いながら洗浄溶液として6Mの塩酸と10%NaCl+1%NaClO溶液と純水で個別にゼオライトを洗浄し排水処理実験を行いました。結果を図4に示します。未使用のゼオライトと同等の吸着力がいずれの洗浄液のときでも見られます。これにより最も簡易で,低コストである純水と気泡のバブリングで十分再生が可能と判断されます。

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- 2.5 バブリング後の吸着力の持続性
- 純水と気泡によるバブリング後の吸着力の持続性を見るため実排水を流した結果を図5に示します。実排水を流したところ8.1Lまで処理が可能でした。本洗浄方法の採用により,未使用のゼオライトの吸着能には及びませんが,約8lを目途に吸着−洗浄−吸着−洗浄の連続処理が可能と判断されます。

- 3.まとめ
- 以上,染色廃水中のSbを凝集−ゼオライト吸着法で処理する可能性を検討し,連続処理が可能との見通しを得ました。本法は,PACの添加量が非常に小さく,ゼオライトの再生も水で洗浄可能であり,処理装置を運転する上で非常に低コストで,処理装置もコンパクトにできる特長があり,今後実用規模での装置の運転や無機顔料工場排水への適用も検討し,本処理法の実用性を確認する予定です。
統括研究調査官 冨永 衞
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