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NIREニュ−ス

1996年9月

微粒子状素材のハンドリングと
その物性評価技術の基礎的研究

−小さな粒の大きさと形−

素材資源部 素材物性研究室   大矢 仁史

1.はじめに
 最近のファインセラミクス,エレクトロニクス素材など機能性材料の進歩はめざましく,ますます多様化してきており,多種多様の機能を持ったものが開発されてきている。

 それに伴い,製品自体もきわめて高精度なものが要求され,物理的あるいは化学的に多様な特性を持った微粒子製造の重要性が大いにクローズアップされてきている。

 鉱物処理分野においても,地球環境を視野にいれた低品位鋼の処理,高濃度スラリーハンドリング,また磁性流体など材料開発分野等で効率の良い微粒子製造技術の開発が切望されている。

 また,最近の微粒子状素材のファイン化でその測定法が多様化,複雑化し,標準粒子の重要性が大きくなってきている。われわれが通常取り扱っている粒子は,特別な場合を除いて,その形状は複雑かつ不規則である。

 したがって,従来から用いられてきた球形の標準粒子だけではなく,粒子径をはじめとして均一な物性でかつ種々の形状を持った粒子が必要となってきている。
 微粒子製造法としては,
  1. 蒸発擬縮法
  2. 気相反応法
  3. 液相合成法
  4. 凍結乾燥法
  5. 液相界面反応法
  6. 粉砕法
などがある。

 液相合成法は,他の方法にくらべ粒子径の制御が容易で,均一な粒子が得やすいといわれている。

 本研究は液相中で,粒子径が均一で多様な形状を持った微粒子を合成し,その物性を測定・評価する手法の開発を目的とする。

 また,微粒子素材の材料化で重要となる高濃度微粒子懸濁液の物性や懸濁微粒子の分散・凝集構造の適正な評価法について検討し,高濃度懸濁液処理プロセスの設計に関する工学的知見を得る。

2.微粒子の合成とその物性評価
2.1 液中微粒子の合成 
 液中での金微粒子と酸化鉄粒子を合成した例を図1,2にそれぞれ示す。

 一般に,これらの粒子を生成するさいには,図3のように核化過程と成長過程が存在し,均一な微粒子を得るためにはそれらの過程が分離され,それぞれ独立に進行することが必要であるといわれている。

 金粒子の場合,粒子が生成されるときには,核化過程が重要であり,その時の金と還元剤濃度によって核の数が決定でき,それらの濃度によって粒子径がわかることが明らかになった。

 これらの粒子は,化学的に安定なため薬品などを担持させ,人体内の特定部分にそれらを運ぶキャリア粒子に用いられる。

 また,鉄は金属として最も重要な材料であるだけではなく,クラーク数も第4位で地球上に広くかつ大量に存在している。

 酸化鉄粒子は,図2のように,非球形であり,棒状のものと紡錘状のものが多い。その他にも,板状,不規則形状,球状のものなどがある。

 現在では,これらの粒子が磁性材料として使われ,針状のものはビデオテープなどの磁気記録用,板状のものがテレホンカードなどの磁気部分,球状や立方体状のものはコピーやレーザープリンタのトナーとして使われている。
 
 図4に,酸化鉄粒子を液中で合成した例を示す。このように,この粒子は,PH,鉄濃度,反応温度,反応時間を変化させることによって,その形態が容易に変わることが特徴である。

 ここでは,それらの条件が変化させやすく,工業的にも応用が可能な気泡塔を用いた合成法の実験装置を図5に示す。

 この装置を用いることにより,多様な形態を持った均一な種々の粒子が合成できることが期待される。

2.2 分散微粒子の物性
 液相中での微粒子の核生成や成長過程は,観測することが難しく,粒子生成機構を実測から解明した例は今までにない。

 このためには,従来から用いられている,レーザー回折,散乱式や光子相関法による粒度分布測定装置では,ナノメーターオーダの粒子径の測定は不可能であり,高出力アルゴンレーザーを用いた光子相関法による粒度分布測定装置が必要となる。
 また,2.3の項で述べる音響振動泳動法による粒度分布の測定装置が最近開発され,その本研究への利用も興味深いところである。

 それらの測定法の精度,適用範囲について検討を行い,分散微粒子系の粒子物性の評価法を確立することは本研究の一つの課題である。

 さらに,生成粒子の形状により材料物性が大きく影響されるが,非球形微粒子の形状評価法については,現在のところ透過型,走査型電子辟微鏡で観測した粒子像を画像処理装置を用いて評価している。

 図6は,へき開性のあるグラファイト粒子を一部はインターカレートすることによってさらにそのへき開性を促進して粉砕し,遠心沈降法と光回折法によって測定した例である。

 粒子径が小さくなり,粒子がブロッキイーな形状から扁平になるほど,光回折のパターンから求めた粒子径は遠心沈降による粒子径より大きくなる傾向がみられ,測定法の違いによって粒子径が変化することが明らかになった。

 したがって,走査型電子顕微鏡法に比べ迅速,簡便な光回折法を用いて,非球形粒子の光回折パターンを詳細に検討することによって,生成粒子の形状指数(扁平度,球形度など)測定の確立が可能であると思われる。

2.3 凝集微粒子の物性
 セラミックス,エレクトロニクスや磁気記録材料として微粒子を利用するさいには,液中に微粒子をサスペンドし,高濃度微粒子懸濁液とすることが多い。

 その時の懸濁液は,分散剤濃度によって,図7のように,(a)の凝集状態から,(b)の分散が良好な状態,さらに(c)のような(a)とは別の分散が悪い状態へと変化する。

 この,擬集,分散状態を制御することは,それぞれの材料物性に大きく影響を与えるため,きわめて重要である。


 最近,図8に示すような原理にもとずく,音響振動泳動法による粒度分布の測定装置が開発された。この装置は,分散状態にある一次粒子の粒度を測定するだけではなく,凝集した二次粒子の粒度分布も測定ができ,懸濁液の擬集,分散状態の判定にも応用が可能な装置であると思われる。

 生成微粒子を高濃度の懸濁液に調製し,音響振動泳動法を用いて高濃度域中での凝集粒子の大きさやゼータ電位を測定し,それらの結果から懸濁液中の凝集・分散状態を推定し,粘性等,流体力学的特性と比較することも本研究の課題と言える。
3.おわりに
 このように,本研究では液中での微粒子の物性評価技術の確立を目指している。

 しかし,現在は,微粒子の合成部分と高濃度懸濁液の擬集・分散状態の測定法の部分に着手したばかりの段階で,克服しなければならない課題が数多く存在する。

 今後は,実験的なデータを蓄積することによってこれらの問題を解決していくことが重要であると思われる。

 また,本研究によって,微粒子物性の評価だけではなく,環境調和材料や触媒への微粒子素材の適用についても検討していくことが,本研究の最終的な目的であると考えている。
4.参考文献
1) 粉体工学会編;粒子径計測技術,日刊工業新聞社(1994)
2) 小林幹男ら;資源と環境, 2,209(1993)
3) 遠藤茂寿;粉体と工業, 27,19(1995)
4) H.Ohya et a1.; Powder Technology,to be submitted.
5) 井上勝也ら;表面, 16,129(1978)
6) V.K.LaMer et al.;Journal of the American Chemical Society, 72,4847(1950)
7) 平賀ら;フェライト, 丸善(1985)
8) H.Ohya et al.;Full Text of 12th Int.Cong.Of Chem.and Proc.Eng.,F8,3,1194(1996)
9) H.Ohya et al.;Chemical Engineering Communication, 106,207(1991)
10) B.1.Marlow et al.;Journal of Energy and Fuels, 2,127(1988)
11) S.Suzuki et al.;Fuel Text of 12th Int.Cong.of chem.and Proc.Eng., 132,1193(1996)

素材資源部 素材物性研究室 大矢 仁史



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