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NIREニュ−ス

1996年12月

塩ビ廃プラスチックの乾式分別

−エアテーブルでプラスチックを分ける−

素材資源部 素材プロセス研究室 大井英節

1.はじめに
 わが国では、年間750万トンものプラスチックが排出されている。図1に示すように、これらの廃プラスチックは、単に焼却されたり(49%)、埋立てられたり(41%)しており、リサイクルされているのは、わずか10%である1)。このリサイクル率を高め、廃棄プラスチックをできるだけ少なくすることは、環境保全や埋立地の延命化といった観点からも、重要な社会的課題である。

 さて、プラスチックのリサイクルとしては、原材料として再び利用するマテリアル・リサイクルが望ましい。しかし、これには限界がある。長期間使用され、物性の劣化したものや、多種類のプラスチックが混合したもののマテリアル・リサイクルには、技術的な多くの困難をともなう。最終的には、発電・固形燃料化・油化等による、エネルギー回収をせざるを得ないものと考えられる2)

 しかしながら、エネルギーを回収するために、プラスチック混合物を燃焼させると、塩化水素ガスが発生する。高温の塩化水素ガスは、炉内部を腐食させる等の問題を引き起こす。ポリ塩化ビニル樹脂(以後PVCと略記)も、その原因のひとつといわれている。
 そこで現在、廃プラスチック中に含まれるPVCを、燃焼させる前に分別する研究が、盛んに進められている。

2.プラスチックを分ける技術
 それでは、プラスチックを分ける方法としては、どんなものがあるであろうか。分けるには、物性の差を利用する。この物性としては、粉体的性質(密度、大きさ、形状)、磁気・電気的性質、化学的性質などがある。現在、(1)湿式比重分別、(2)乾式比重分別、(3)電磁・静電分別、(4)X線・近赤外分別などが検討されているる3)

 (1)は、水や塩化ナトリウム溶液を媒体に用い、浮く物と沈む物に分ける。この他に、遠心力を利用したハイドロサイクロンによる方法も試みられている。脱水・乾燥や、廃水処理を必要とする点に問題がある。

 (2)としては、風力分別が検討されている。土砂、ガラス、金属等の密度の大きい物と、紙、プラスチックなどの密度の小さい物の分別には有効である。
 しかし、プラスチックの密度は、図2に示すように小さい。また、種類が違っていも、それらの密度には、大きな差がない。(1)と(2)の方法では、混合プラスチックをそれぞれの単体に、低コストで分別するのは困難である。

 (3)の電磁分別は、プラスチック中の鉄を除去するのに使われる。混合プラスチックの分別はできない。静電分別は、プラスチックの帯電性の差を利用する。分離精度に難点がある。

 (4)のX線分別は、X線の吸収率の差により分別する。PETとPVCボトルの分別に使われている。最近では、近赤外線に対するスペクトルにより分別する方法も検討されている。しかし、細かく破砕されたものの分別には適さない。

 このように、いろいろな分別法が検討されているが、現在までのところ、破砕された混合プラスチックから、PVCを分別する技術は確立されていない。

 エアテーブルによる方法は、密度だけでなく、大きさ、形状、摩擦等の物性を利用して分別する。破砕プラスチックの混合物から、PVCを除去できる可能性がある。模擬プラスチック試料を用いて検討したところ、よい成績を得ることができた。

3.エアテーブルとは
 エアテーブルは、振動と空気流の働きを利用して、分別する装置である。石炭の選別を目的として、1930年代に、アメリカ中西部を中心に開発された。
 この地域では、利用できる水が少なく、湿式選別が適用できなかったためである。現在、石炭の選別にはあまり使われていない。おもに農産物(コーヒー豆、種子、ナッツなど)やコルク、木材チップから異物を除去したり、タングステン鉱石、銅鉱石などの選別に広く利用されている。

 このように、アメリカやさらにヨーロッパで盛んに使われた装置も、現在までのところ、日本ではほとんど使用されていない。水を容易に利用できたことと、一般に、乾式分別は湿式分別に比べ、分離精度がよくないと考えられていたためである4)

 しかしながら、エアテーブルにより廃プラスチックを分別できれば、低コストで処理できるものと考えられる。脱水、乾燥あるいは廃水処理設備等を必要とせず、その上、装置もシンプルなためである。

4.PVC(塩ビ)を分ける
 実験には、図3に示すような装置を使用した。分別しようとする試料を、ホッパ(1)に入れる。この試料は、電磁フィーダ(2)によって、振動デッキ(3)上に供給される。振動デッキの底面には、ステンレススチール製の網が張られている。このため、空気流は下から上に吹き抜けることができる。空気流は、装置内部にある回転翼により発生する。振動デッキは、往復直線運動する。また振動デッキの表面には、6本のリッフルが取り付けられている。

 分別された密度の小さいもの(軽産物)は、排出エッジ(4)の、向かって左側より排出される。反対に、密度の大きいもの(重産物)は、右側(傾斜の高い方)から排出され、容器に回収される。(5)にあるコントローラーにより、デッキの傾斜角や振動数、空気の流入量などの分別操作条件を変えることができる。
 
 ポリエチレン(PEと略記)とPVCを、破砕機により5mm以下に破砕した。PEを85%、PVCを15%混合して、試料とした。図4に試料の写真を示す。PEおよびPVCの平均径は、3.37および3.13mmである。また、密度はPEは899kg/m3、PVC1376kg/m3である。
 このような装置と試料を用い、PVCの分別可能な操作条件を検討した。ここでは、できるだけPVCの含有率の低いPE分別物を、できるだけ高い回収率で得ることが目的となる。


 まず、振動デッキの傾斜角の影響を検討した。その結果を図5にしめす。縦軸は、PE中に混入するPVCの含有率と、PEの回収率をしめしている。横軸は、正面から見た場合の、デッキの左右の傾斜角(エンドスロープ角)を意味する。このとき傾斜角以外の分別条件は、デッキの振動数 625min-1、空気流速1.25 m/sである。
 図から明らかなように、デッキの傾斜角をて適切に設定すると、最初 15%含んでいたPVCを、0.8%に低減したPE産物を得ることができる。しかもPEの回収率は、99%にも及ぶ。
 同様に、デッキの振動数を変えた場合の、軽産物中のPVCの含有率とPEの回収率との関係を図6に示す。振動数が小さいときには、全く分別は起こらないが、400min-1以上に振動数が増大すると急に分別が進む。振動数が410min-1のとき、PVCの含有率が 0.4%の軽産物を94%の回収率で分別することができた。このような分別成績は、湿式分別に匹敵あるいは、それ以上とも考えられる。

5.エアテーブルによる分別の原理
それでは、なぜエアテーブルを用いると、密度差の小さいプラスチックを分別できるのであろうか。

 振動デッキ上に供給されたプラスチック混合物が、分別される様子を図7に示す。密度の大きなプラスチックは、傾斜の高い方から分けられる。反対に、密度の小さなプラスチックは、傾斜の低い方から落下する。このようにして、混合プラスチックは分けられる。
 
 以上のような分別が起こるには、まず、プラスチック混合物が、成層化される必要がある。成層化とは、密度の小さいPEが上に、大きいPVCが下の層になることである。成層化には、主に空気流による抗力が影響する。従って、分別物の密度、大きさ、密度も関係することになる。

 さらに、成層化されたプラスチックが、別々に取り出されるには、それぞれが互いに別の方向に移動されなければならない。これには、デッキの振動、傾斜角が影響する。また、デッキ上を移動する際には、分別物の形状、大きさ、デッキ表面との摩擦などが大きく関係する。

 この移動速度については、振動コンベヤー上の粉体の運動から類推することができる。これまでの研究によると5)、(1)振動の形式とストローク角度、(2)振動数、(3)振幅、(4)傾斜角などが影響する。このほか、粉体の物性に関連したものとして(1)嵩密度、(2)粒子の形状と大きさ、(3)粒子の粒度分布、(4)内部摩擦係数、(5)滑り摩擦係数、(6)付着力、(7)層の高さなども影響を及ぼす。

 このように、振動デッキ上のプラスチックの運動は、いろいろな分別条件の影響を受ける複雑な現象である。しかし、分別しようとする対象物の物性にあわせて、デッキの振動数、傾斜角、空気流速などを適切に設定すると、密度の大きいプラスチックは、傾斜を上り、反対に密度の小さいプラスチックは、傾斜の低い方から排出させて分けることができる。

 エアテーブルは、分別対象物の単に比重差だけでなく、多くの操作条件や対象物の物性の差により分別する装置である。この点をうまく利用すれば、廃棄物の分別にも威力を発揮することができる。

 最後に、その特長を述べると以下のようである。

  1. 乾燥した分別産物を得ることができ、分別産物の脱水や乾燥および廃水処理装置を必要としない。
  2. 装置の構造が簡単なため、保守管理と操作が容易である。
  3. 処理可能な分別物の大きさも、その密度によって処理粒度範囲は多少変化するが、0.3から3.0cmものが、その処理に適している。石炭分別の場合には、2インチ程度の大きさのものも分別が可能である。
  4. 同時に多くのフラクションに分別できる。
  5. 密度が同じ産物については、それらの形状が異なれば、その違いによって分別することもできる。
6.おわりに
 エアテーブルを使用すると、廃プラスチックの混合物から、PVCを効果的に分別できることが分った。しかしここまでの研究は、分別の可能性を基礎的に検討したものである。今後は、廃自動車や廃家電品の、シュレッダダスト等に含まれるプラスチックについても、さらに検討を続ける予定である。
参考文献
1) 村上昌宏:資源・素材'96 資源と環境、c2-14, p198(1996)
2) 糟谷敏秀:プラスピア、84, 2(1993)
3) 田中克二:化学装置、No.8, p81 (1992)
4) Wills, B.: Mineral Processing Technology, p407, Perganon Press(1992)
5) Colijin, H.: Mechanical Conveyors for Bulk Solids, p236, Elsevier(1985)

素材資源部 素材プロセス研究室 大井英節



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