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解説CO2の水素化によるメタノール合成− RITE/NIRE共同研究開発の進展状況 −「資源と環境」誌 1997年11月発行 Vol.6 No.6 斉藤 昌弘a、渡辺 大器b
1.はじめに 標題の共同研究開発は、NEDOからの研究委託によりRITEが進めている「接触水素化反応利用二酸化炭素固定化・有効利用技術研究開発」の主要な要素技術開発の一つである。 この共同研究開発は、平成2年12月より既に約7年を経過するが、幸い、研究開発は順調に進捗しており、これまでに、メタノール合成用高性能触媒を開発するとともに、昨年の春には小規模ながらもメタノール合成用のベンチプラントを建設し、工業化基礎データの取得を行うまでになっている。 本共同研究開発では、実用的なメタノール合成用触媒を目指した触媒開発研究、気相・液相メタノール合成プロセスの研究、表面科学的手法や計算機による反応機構の研究など基礎的なものから実用的なものまで、かなり幅の広い研究を行っている。 本解説では、メタノール合成用触媒の開発状況、小規模循環反応装置によるメタノール合成試験、ベンチプラントの運転状況などについて紹介する。 2.本プロジェクトの全体システム このプロジェクトの目的は、火力発電所などの固定発生源から排出されるCO2 を分離し、それを、水の電気分解により製造した水素と反応させて、メタノールなどに変換して有効利用することにより、CO2 の排出量を削減することである。 現在、当プロジェクトでは、水素を製造するための電力は、主に水力あるいは太陽などの自然エネルギーから製造されるものとして、電力供給地としては日本以外の遠隔地を想定している。そのため、本プロジェクトの全体のシステムとしては、Fig.1に示すようなものが考えられている。 このシステムにおいて、メタノールを発電などに使用した後に発生するCO2 を回収・再利用する場合には、CO2 についてはクローズドシステム(CO2 のグローバルリサイクルシステム)となる(前解説1) では、クローズドシステム図を掲載したが、本プロジェクトの内容を忠実に表わすには、むしろ本解説の図の方が適当である)。 ある試算によれば、製造されたメタノールを発電に使用し、電気を製造した場合、このシステムのエネルギー効率は約30%であるといわれている。すなわち、自然エネルギーから100万kwの電力が得られた場合、日本では約30万kwの電力が使用できることになる。 このシステムにおいて開発すべき要素技術としては、Fig.1 にも示したように、CO2 の分離技術、水の電気分解による水素製造技術、CO2 の水素化反応技術がある。これらの要素技術の開発は、RITEと3つの国立研究所(物質研、大工研、資環研)との間の共同研究により行われてきているが、筆者らのグループは、CO2 の水素化反応技術の開発を担当している。 この水素化反応において重要な点は、反応速度および選択性の高いことであり、その点でメタン合成およびメタノール合成が適している。当グループでは、輸送の容易さ、化学品としての重要性、将来性などを考慮して、メタノール合成について研究開発を行っている。
3.メタノール合成用触媒の開発
先ず、本プロジェクトを始める前に、CO2 とH2からのメタノール合成触媒として、Cu/ZnO系触媒が高活性を示すことが報告されていたので2)、この触媒系に注目した。 次に、これまでの報告ではあまり明瞭ではなかったCu/ZnO系触媒における他の酸化物の役割について、種々のCu/ZnO系3成分触媒(Cu/ZnO/MxOy)を調製して詳細に検討した3)-6)。 その結果、触媒活性を向上する酸化物として、Al2O3、ZrO2 、Ga2O3およびCr2O3が見いだされた。Fig.2に、触媒のメタノール合成活性と触媒のCu表面積との関係を示す。この図で、各直線の傾きは比活性(Cu表面積あたりの触媒活性)を示すので、上の酸化物の役割は次のように分類することができた。
また、実用触媒としては、触媒活性の長時間の安定性が重要であるので、開発したCu/ZnO系多成分触媒(Cu/ZnO/ZrO2/Al2O3/Ga2O3)の活性経時変化についても調べた。その結果をFig.4に示す。 ここでは、現行の合成ガスからのメタノール合成に用いられている実用触媒(Cu/ZnO/Al2O3)との比較も行った。Fig.4から、本共同研究で開発したCu/ZnO系多成分触媒は長時間の耐久性にも優れていることが明らかになった。しかし、多成分触媒中のGaが高価であるので、現在は、Gaを除いた多成分触媒の耐久性を向上するため、種々の検討を行っている。
4.小規模循環反応装置によるメタノール合成 CO2 の水素化によるメタノール合成反応(CO2 + 3H2 = CH3OH + H2O)におけるメタノールの平衡収率はかなり低く、現在の合成ガスからのメタノール合成における平衡メタノール収率の約1/3である。例えば、523K、5MPaの反応条件では、約17%である。そのため、合成ガスからのメタノール合成の場合でも行っているように、未反応ガスは循環して再使用する必要がある。 そこで、小規模循環反応装置(触媒充填量約50ml、フローシートはFig.5 に示す)を製作し、先に開発したCu/ZnO系多成分触媒を用いてメタノール合成反応を行った。 反応は約100時間で定常となり、メタノール、水、CO以外のメタン、エタン、ジメチルエーテル、ギ酸メチルなどの副生成物の量は極く僅かであり、メタノール合成の選択性は99.8%以上であった。 合成されたメタノールの純度は、Table 1に示すように、99.9%以上であり、また、現在、合成ガスから工業的に製造されている粗メタノールの純度よりも高いことが明らかになった。これは、反応器の入口における反応ガス中のCO(炭素数を増加させる反応に対して反応性が高い)濃度が、CO2 からのメタノール合成の場合の方が、合成ガスからのメタノール合成の場合に比べて低いためと考えられる7)。
5.ベンチプラントの建設とその運転状況
現在、このベンチプラントの運転は順調に行われており、メタノール合成の工業化基礎データの取得を行っている。 Fig.7に、ベンチプラント試験において使用されている触媒のメタノール合成活性を示す。この触媒の活性は、SV=10,000h-1では、平衡値の約80%、SV=5,000h-1ではほぼ平衡値に達している。この場合のメタノール生成量は、ワンパス反応装置(触媒量1ml)の場合のメタノール生成量より約10%低いが、これは、Fig.7 に示した反応温度は触媒層の温度分布における最高温度を取っているためと思われる。 また、Fig.8に、反応条件を変えた場合のメタノール生成量を示す。メタノール生成量は、反応温度および反応圧力が高くなるにつれて、増加する傾向があるが、反応温度270℃では、ほぼ平衡値に達している。 さらに、Table 2 には、ベンチプラントから取り出した液体生成物の組成を示す。液体生成物の主成分は、メタノールと水であるが、溶解したCO2 、副生成物のギ酸メチルやエタノール等の高級アルコールも確認されている。 メタノールの純度は、Table 1 に示した結果と同様に、いずれの反応温度でも99.9%を越えているが、250℃の場合が最も高くなっている。これは、230℃では、ギ酸メチルの生成量が多く、一方、270℃では、高級アルコールの生成量が多いためである。
今後、ベンチプラント試験において、さらに詳細なデータの集積並びに長時間のメタノール合成実験を行う予定にしており、これらの検討を通して、CO2 の水素化によるメタノール合成の基礎技術を確立したいと考えている。
6.おわりに 本共同研究開発も残すところ2年半となり、仕上げの時期になっているが、今後、メタノール合成用触媒のコストパーフォーマンスからの見直し、副生成物の抑制による選択性の向上、実用化のための基礎データの取得などの課題について検討を進めていくことになっている。また、筆者らは、本共同研究開発の成果が、CO2 による地球温暖化問題の解決に少しでも貢献できることを強く期待している。 参考文献 1) 斉藤昌弘,渡辺大器,資源と環境,3,(2), 21(1994). 2) 斉藤昌弘,触媒,35, (8), 485(1993). 3) T. Fujitani, M.Saito, Y. Kanai, M. Takeuchi, K. Moriya, T. Watanabe, M. Kawai, T. Kakumoto, Chem. Lett., 1993, 1079 4) 藤谷忠博,斉藤昌弘,金井勇樹,武内正己,守屋圭子,渡辺大器,河井基益,角本輝充,触媒,35, (2), 92(1994). 5) 藤谷忠博,高原 功,斉藤昌弘,金井勇樹,武内正己,守屋圭子,角本輝充,渡辺大器,資源と環境, 3, (2), 92(1994) 6) M. Saito, T. Fujitani, M. Takeuchi, T. Watanabe, Appl. Catal. A: General, 138(1996), 311 7) M. Saito, M.Takeuchi, T. Watanabe, J. Toyir, S. Luo, J. Wu, Energy Convers. Mgmt, 38, S403 (1997).
平成9年5月21日、CO2 固定研究会にて発表。 a温暖化物質循環制御部化学プロセス研究室 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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