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論文
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| 小林光雄a、 | 稲葉 敦a、 | 近藤康彦a、 | 八木田浩史b、 |
| 松本成司c、 | 山崎正和c、 | 近藤裕昭d、 | 大矢仁史e、 |
| 大井昭彦f、 | 山口 勉g、 | 匂坂正幸h、 | 水野光一i、 |
| 城戸伸夫j |
要旨 我が国の2050年までのCO2排出量を解析するためのWindows用ソフトウェア「NICEモデル」(NIRE CO2 Emission Model)を開発した。NICEモデルでは、19のパラメータの選択で決定されるシナリオで構築されるエネルギー需給構造に基づき、CO2排出量が計算される。19のパラメータは、GDPと人口の増加、産業、民生、交通のエネルギー利用効率の向上などエネルギー需要に関するものと、再生可能エネルギー利用技術の開発や電源構成の変化などエネルギー供給に関するものからなる。
NICEモデルは通常のパソコンのWindows上で動作する。我が国全体のCO2排出量および産業、民生、輸送の各部門のCO2排出量が、経済や技術のパラメータの選択結果として図示されるので、それぞれのパラメータとCO2排出量の関係を理解するツールとして有用である。
1.はじめに
近年、化石燃料の消費に伴うCO2の排出が主たる原因とされる地球温暖化が問題となっている。本年(1997年)12月には気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)が京都で開催され、2000年以降の温暖化対策の取り組みについて、2010年までの国別削減目標を含めて議論される予定となっている。今後、CO2排出抑制のための技術開発とそれによる効果を推定する作業が必要になると思われる。
資源環境技術総合研究所では、所内研究会「CO2問題研究会」において平成7、8年度の2年間「二酸化炭素排出を考慮した我が国のエネルギー将来展望の調査研究」1,2) を実施した。この調査研究では、技術開発および導入によるCO2排出抑制の可能性を考察することを目的とし、エネルギー需要部門と電力供給の技術の開発と導入の可能性を調査した。
将来のエネルギー需要構造は、それぞれの部門での技術開発とその導入の想定シナリオによって変化する。したがって、我が国の2050年までのCO2排出量を計算するためには、各部門別に想定されたシナリオを有機的に結合し、それぞれのシナリオの組み合わせによりエネルギー需給構造を決定し、CO2排出量を算出する計算機用ソフトウエアが必要となる。
本論文では、「CO2問題研究会」で開発された我が国の2050年までのCO2排出量算定用ソフトウエア「NICEモデル」(NIRE CO2 Emission Model)について述べる。
2.NICEモデルの概要
NICEモデルでのCO2排出量は、以下の手順で計算される。
NICEモデルの概念的なストリームマップをFig.1に示す。NICEモデルの構造を大きく分けると、エネルギー需要の試算とエネルギー供給、特に電力供給の試算の2つの部分から成っている。

エネルギー需要は、産業、民生業務用、民生家庭用、運輸の各部門がさらに詳細に分けられ、それぞれの詳細部門のエネルギー需要の総和として、電力、石油製品、石炭、LNGなどのエネルギー種別に集計される。
各詳細部門のエネルギー需要は、それぞれの部門のエネルギー需要を決定する因子をパラメータとして選択することで決定される。因子の抽出とその変動によるエネルギー需要の変化は、モデル化に先立つ調査研究1,2) で検討されている。モデル上での取り扱いは第3章に述べる。
調査研究の結果では、産業部門以外のエネルギー需要量は、人口とGDP(国内総生産)をパラメータとして使用し算出される場合が多い。産業部門では、生産量の変化をパラメータとする場合が多く、エネルギー需要が人口、GDPと直接的に関係している例は少ない。
エネルギー供給は、需要に見合う量を供給することが基本になっている。電力供給ではまず、自然エネルギー利用の発電技術と原子力発電技術による発電電力量をパラメータとして選択する。さらに、耐用年数を考慮した既存および建設計画中の火力発電の発電電力量を加え、これが需要電力量に満たない場合は、1対1のシェアで石炭火力発電とLNG火力発電が導入されるものと仮定される。
CO2排出量は発電時の分も含めて燃料種別に集計された供給量にそれぞれの炭素含有量原単位を掛けて求められる。太陽、地熱、水力、風力の自然エネルギーと原子力の発電からはCO2は排出しないとされている。
| パ ラ メ ー タ | d | シナリオ | 値 | 内 容 |
| GDP計算法 | * |
− − |
− − |
従来法 OECD諸国値を準用 NICE独自法 国民1人当たりの伸び率一定 |
| 経済成長率(GDP伸び率) | * |
高位 中位 低位 |
3.0% 2.5% 1.8% |
OECD諸国値 2026年〜 2.2% 〃 2026年〜 1.7% 〃 2026年〜 0.6% |
| * |
高位 中位 低位 |
3.0% 2.0% 1.5% |
国民1人当たりGDP伸び率 〃 〃 |
|
| 対GDPエネルギー弾性率 | * |
高位 中位 低位 |
0.8 0.6 0.4 |
エネルギー多消費の設定 「NICE」のデフォルト エネルギー消費量 小 |
| 地熱発電量 | * |
高位 低位 |
500万kw 1,000万kw |
2050年 到達発電量 〃 |
| 風力発電量 試算式係数 | * |
高位 低位 |
75 375 |
風車設置密度 粗 10D×10D 〃 密 10D× 3D |
| 原子力発電量 | * |
高位 低位 |
7050万kw 14000万kw |
2050年導入量 最小導入 〃 最大導入 |
| 焼却ゴミの発電割合 | * |
高位 低位 |
50% 75% |
2030年までの到達割合 以後一定 〃 |
*)default of the software
3.NICEモデルでのエネルギー需給の計算方法
NICEモデルの計算の開始年は1993年である。1993年以降の需給構造の算出に必要な1993年の統計データがデータベースとしてソフトウエア上に整理されている。
前述したようにNICEモデルでは、パラメータを選択することでシナリオが決定される。Table1 にGDPと電力供給に関する、Table2 に部門別のエネルギー需要に関する設定を変更できるパラメータとその選択値を示す。
両表中、シナリオ覧の高位、中位、低位の値は、調査研究において可能性がある値として定められた選択値を示している。また「高位」は、値そのものの大小を示すのではなく、CO2排出量が大となる結果になる方が「高位」とされている。
| パ ラ メ ー タ | d | シナリオ | 値 | 内 容 |
| 自動車生産台数 | * |
高位 低位 |
1,200万台 700万台 |
基準年データのまま不変 2050年700万台まで直線的に減少 |
| 鉄鋼輸出量 | * |
高位 低位 |
2351万t 1175.5万t |
基準年の輸出量を維持 2050年までに輸出量半減 |
| 鉄鋼産業省エネ率 | * |
高位 低位 |
0% 10% |
省エネを考慮せず 2050年までに10%の省エネ達成 |
| 紙類の生産量増加率 | * |
高位 低位 |
2% 1% |
年増加率 〃 |
| 化学工業の年成長率 | * |
高位 低位 |
1% 0% |
年1%成長 基準年のエネルギー消費を持続 |
| 民生業務用 省エネ率 | * |
高位 低位 |
0% 24% |
省エネを考慮せず 2050年省エネ率、35年間15%省エネの割合 |
| 家庭暖房 灯油使用量 | * |
一定 減少 |
− − |
基準年の量を維持 年17Mcalづつ減少 |
| 家庭給湯 電力・灯油使用量 | * |
一定 減少 |
− − |
基準年の量を維持 年12Mcalづつ減少 |
| 家庭厨房 LPG使用量 | * |
小 大 |
9Mcal/年 18Mcal/ |
LPG使用量の年減少量 〃 |
| 運輸 輸送量計算法 | * |
高位 低位 |
− − |
GDPに相関 自動車台数制限なし 自動車台数人口で制限、2050年1台/人 |
| 運輸 輸送効率向上 | * |
高位 低位 |
− − |
基準年の燃費、変化せず 乗用車年1%、トラック年0.5%、燃費向上 |
| 運輸 燃料代替車の導入 | * |
高位 中位 低位 |
− − − |
考慮せず 自然体で導入 導入量 小 高水準で導入 導入量 大 |
*)default of the software
表には示していないが、NICEモデルではパラメータの値を選択するだけではなく、値そのものを任意に設定することもできる。d欄に[*]のある選択値はNICEモデルでデフォルトとして設定されている選択値を示す。調査研究において、部門別に検討された現状維持に近いシナリオがデフォルトとして設定されている。
表に示した以外にも、シナリオとして設定した計算上必要となるパラメータが数多くあるが、現状ではシナリオが固定され変更できない。
以下、計算方法とパラメータの設定方法の詳細を述べる。
3.1 人口とGDPの将来見通し
前述したように、産業部門以外のエネルギー需要量は、人口とGDP(国内総生産)をパラメータとして使用し算出される場合が多い。
NICEモデルでは、人口は厚生省人口問題研究所による推計の中位推計値3) が多項式近似して用いられている。この近似式を用いると、1990年に1億2300万人であった我が国の人口は、2010年の約1億3000万人をピークに、その後減少して2050年には約1億900万人になる。
GDPは、2種類の計算法から使いたい方を選択できるようにした。計算法の1つは、IPCCが1992年に公表した地球温暖化予測で使用した世界経済成長率シナリオのOECD諸国の成長率を準用した。
2つ目の計算法では、国民1人当たりのGDP成長率を一定とし、GDPを1人当たりGDPと人口の積の形で試算した。これはNICEモデル独自の考え方である。いずれの場合も、GDP成長率が選択可能である。
3.2 エネルギー需要
エネルギー需要は、産業部門、民生部門業務用、民生部門家庭用、運輸部門の4つの大きな部門に分け計算される。
3.2.1 産業部門
産業部門は、エネルギー消費量の多い、鉄鋼、紙・パルプ、窯業・土石、化学工業の主要4業種とその他の製造業およびその他産業の6つに分けられている。その他産業には農業・水産業、鉱業、建築業が含まれる。
鉄鋼産業のエネルギー需要は、鉄鋼生産1トンあたりのエネルギー消費量と生産量の積で算出される。前者は、鉄鋼産業の省エネルギー率をパラメータとし、2050年までに10%の省エネルギー達成されるか、省エネルギーを考慮しないかが選択可能である。
鉄鋼生産量は、建設、自動車、輸出とその他の部門別消費量から算出される。建設には土木も含まれる。将来の住宅着工床面積が内部シナリオとして設定されており2)、これと建設産業の鉄鋼使用量が比例する。
自動車の生産台数は1993年で約1,200万台であるが、これが2050年まで変わらない場合と700万台まで直線的に減少する場合が選択できる。鉄鋼輸出は1993年に2,351万トンであったが、2050年まで変わらない場合と半減する場合が選択できる。1993年の生産量の約50%はその他で使用されたが、この消費量は2050年まで変化しないとされている4)。
窯業・土石産業でエネルギー消費がもっとも多いのはセメント生産である。セメントの大部分は建設産業向けなので、窯業・土石産業のエネルギー消費量は内部シナリオの住宅着工床面積に比例するとされている。
紙・パルプ産業では、長期的に見ると紙類の生産量は増加するものと考え、年成長率1%と2%が選択できるようにした。また、1993年に51.1%であった5) 古紙利用率は2050年までに65%まで直線的に増加するものとした。
化学工業はその製品が広範囲にわたり、2050年までの適切なシナリオを設定するのが困難である。そこで、過去のエチレン誘導体生産の年伸び率である1%が将来も維持される場合と伸びない場合を選べるようにした。
主要4業種以外のその他製造業とその他産業は現状維持であると仮定した。
Table3 に基礎データである1993年の業種別、燃料種別のエネルギー消費量6) を示す。産業部門のエネルギー需要試算ではこの燃料種別のエネルギー構成は変化しないものとした。Table3 にはCO2排出量を計算するときに用いる、燃料種別の熱量当たりの炭素重量原単位も示してある。
| エネルギー名 | 鉄 鋼 | 窯業・土石 | 紙・パルプ | 化学工業 | 他製造業 | 他 産 業 | Cg/Mcal |
| 原料炭 一般炭 無煙炭 コークス COG BFG・LDG 自家発石炭系 石炭合計 |
42853 994 56 762 -1742 -3394 1620 41149 |
0 5199 841 191 158 43 1062 7494 |
0 1176 0 0 0 0 1781 2957 |
2 825 51 98 66 44 2049 3135 |
0 282 0 593 130 186 0 1191 |
0 56 19 0 0 1 0 76 |
99. 103.4 116.25 123. 46. 46. 100. |
| 原油 ガソリン ナフサ 灯油 軽油 A重油 B重油 C重油 精油所ガス オイルコークス LPG 自家発石油系 石油合計 |
0 0 0 328 24 569 4 951 0 463 698 32 3069 |
0 0 0 100 11 939 7 1581 0 769 230 825 4462 |
0 0 0 74 2 432 4 2031 0 131 71 2459 5204 |
0 0 24949 277 2 1067 9 1048 0 540 2681 3663 34236 |
0 98 100 2811 2118 5875 17 1986 0 1273 5599 674 20551 |
0 0 0 4402 7145 6023 2 162 0 0 0 43 17777 |
80.2 76.58 76.1 77.48 78.39 79.11 80.47 81.8 68.3 106.12 68.3 80. |
| 天然ガス NGL 都市ガス ガス合計 |
0 0 1401 1401 |
0 0 291 291 |
0 0 904 904 |
436 2938 894 4268 |
49 0 2375 2424 |
344 0 0 344 |
56.3 76.1 56.3 |
| その他 自家発水力 電力 |
0 61 4567 |
0 172 1441 |
0 37 882 |
0 104 2018 |
90 0 14812 |
0 0 550 |
0. 0. 0. |
3.2.2 民生部門
民生部門は業務用と家庭用に分かれる。業務用のエネルギー種別の過去の消費量を解析した結果、1人当たりのGDPとよい相関を持つことが解った2)。
そこで、エネルギー種別の1人当たりGDPに対する弾性率を求め、需要量を試算した。省エネ率を選択できるパラメータとし、35年間に15%省エネされるか7) 、省エネを考慮しないを選択できるようにした。
家庭用では、エネルギー消費を用途別に暖房、冷房、給湯、厨房、照明・動力に分けて過去の消費量を解析するとともに、断熱材を用いた省エネルギー住宅の普及、機器のエネルギー効率の向上も考慮した。
用途別エネルギー需要の試算では、可処分所得、消費者物価指数、燃料価格、省エネ率などを因子とする多変量解析結果8,9) を利用しつつエネルギー需要の上限を推定する新たな考え方を導入した。シナリオを設定できるパラメータは、暖房の灯油使用量、給湯の電力、灯油使用量、厨房のLPG使用量の3つで、それぞれ他のエネルギー使用量との比率を減少させるか否かを選択できるようにした。
3.2.3 運輸部門
運輸は旅客輸送と貨物輸送に分かれる。過去の傾向を解析し、GDPと民間最終消費支出、民間最終消費支出と旅客の輸送量(人・キロ)、貨物の輸送量(トン・キロ)との相関式を求めた。輸送量を輸送機関別、油種別に割り振り、エネルギー需要量を求めた。
この回帰式で2050年までの需要量を試算すると、2050年に国民1人当たり約1.5台の自動車を保有することになり、現実的でない面もある。そこで、現在国民1人当たり約0.52台の保有台数が2050年までに1台に増加するとする、人口による保有台数制限シナリオと、保有台数制限なしを選択できるようにした。
さらに、今後輸送効率が改善されることを予想し、旅客ガソリン車の燃費が年1%、貨物トラックの燃費が年0.5%づつ改善される輸送効率向上シナリオ、電気自動車、天然ガス車、LPG車などの燃料代替車の導入シナリオも選択できるようにした。
3.3 エネルギー供給
エネルギー供給量は、積算されたエネルギー需要量に見合う供給がなされると仮定され算出される。 水力発電量は、2010年までは総合エネルギー調査会見通し10) のシナリオに従い、以後は2010年の発電量を維持すると仮定されている。太陽光発電量は、2010年までの電気事業審議会資料の見通し11) を2050年まで外挿して求めた。
これらはNICEモデルの内部シナリオであり変更できない。地熱発電の発電電力量は、2010年までは電気事業審議会資料の値とし、以後の導入量を選択可能とした。風力発電の発電電力量は、風車設置密度をパラメータとして選択できる。
原子力発電の設備容量の見通しは、昨今の原子力を取り巻く状況から、かなり不透明になっている。1994年の「石油代替エネルギーの供給目標」12) の原子力導入計画通りに進行し、以後2050年まで同じ割合で設備導入されるとする最大導入量と、原子力開発の下方修正がされ、同目標の2010年分が2050年に達成されるとする最小導入量を選択できるようにした。
ゴミ発電量の試算では、一般ゴミだけを対象とし、ゴミの量を1kg/人・日、発熱量2,000kcal/kg、焼却割合が2010年までに100%に達し、現在約10%である発電効率が、2010年以降年2%づつ上昇し、2020年には発電効率30%のスーパーゴミ発電が完全に導入されると仮定した。焼却されるゴミのうち発電に回される割合をパラメータとし、2020年までに50%または75%を選択できるようにした。
化石燃料を利用する火力発電所の稼働中のもの、建設計画中のものを調査し、石油、石炭、LNG火力発電所の耐用年数をそれぞれ、25、30、35年と仮定して、供給電力量を推定した。その後も石油火力は、離島部など小規模なもの200MW分が存続するとした。これらは内部シナリオであり変更できない。
NICEモデルでは、上記の発電量の和が需要電力量に満たない場合は、石炭火力、LNG火力で折半して補う。そこで、石炭、LNG火力の新技術について導入可能年、発電効率、耐用年数などを調査した。
新たに建設される発電所は、その時点でもっとも効率の高い技術が採用されると仮定し、石炭火力では2030年までは石炭ガス化複合発電(IGCC)で、2030年以後は石炭MHD発電で、LNG火力では2015年まではガスコンバインドサイクル発電で、2015年以後は高温型ガスタービン発電で不足分を補うことにし、それらの効率を基に化石燃料の消費量が算出される2)。
4. ソフトウエアの機能と計算例、および現状での限界
NICEモデルはWindowsのアプリケーションソフトである。NICEモデルでは試算結果である全CO2排出量をグラフ、表として表示するだけではなく、試算過程やシナリオ選択の差を各部門別に表示できる。
NICEモデルでは、パラメータの値を自由に設定することもできるので、試算するシナリオの組合せは無限に近くある。使用の一例として、選択できるパラメーターのシナリオを現状維持に近く選択した現状維持ケースと、CO2の排出が抑制されるように選択したCO2排出抑制ケースを比べてみる。
| パ ラ メ ー タ | 現 状 維 持 ケ ー ス | CO2 排 出 抑 制 ケ ー ス |
| 【エネルギー需要部門】 自動車生産台数 鉄鋼輸出量 鉄鋼産業省エネ率 紙類の生産量増加率 化学工業の年成長率 民生業務用の省エネ率 家庭暖房灯油使用量 家庭給湯電力灯油使用量 家庭厨房LPG使用量 輸送量計算法 輸送効率の向上 燃料代替車の導入 【電力供給部門】 地熱発電 風力発電 原子力発電 ゴミ発電 |
1,200万台/年を維持 2,351万トンを/年を維持 省エネは進行しない 2%/年で増加 1%/年で成長 省エネされない 基準年の量を維持 基準年の量を維持 9Mcal/年で減少 GDPとの過去の相関を維持 燃費を基準年のまま維持 導入を考慮せず 2050年までに500万kW導入 2050年までに15万kW導入 2050年までに7,500万kW導入 2030年から50%発電に利用 |
2050年で700万台に減少 2050年で輸出量半減 2050年で10%省エネを達成 1%/年で増加 現状維持、成長率0% 2050年で24%省エネ達成 17Mcal/年で減少 12Mcal/年で減少 18Mcal/年で減少 人口を基準に自動車台数制限 乗用車1%/年、トラック0.5%/年で向上 高水準で代替車を導入 2050年までに1,000万kW導入 2050年までに75万kW導入 2050年までに14,000万kW導入 2030年から50%発電に利用 |
Table4 にそれぞれのケースで選択したパラメータを示す。どちらの場合もGDP計算法は国民1人当たりのGDP伸び率一定を使用し、伸び率年2%とした。Fig.2、Fig.3に現状維持ケースとCO2排出抑制ケースの部門別CO2排出量を、Fig.4、Fig.5に同じく燃料種別CO2排出量を示す。
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現状維持ケースではCO2排出量は単調に増加するが、CO2排出抑制ケースではCO2の排出が抑制されることがわかる。部門別では全CO2排出量に占める割合の高い、運輸部門、民生部門のパラメータの選択が全排出量に影響を与えている。
現状のNICEモデルでは、たとえば、鉄鋼生産量を算出する基礎となる自動車生産台数と輸送部門の自動車保有台数が相関していないことなど部門間の相互関係が十分に記述されていない。
また、産業部門のエネルギー需要量がGDP成長率の選択と無関係に決まることや、エネルギー供給では化石燃料の賦存量による制約や価格の高騰は考慮していないことなど不備な点が多く、ここで示した2つのケースの結果に、単なる試算結果以外の意味を持たせることは難しい。しかし、今後改良を進めることで、より詳細な検討を可能にすることができるものと思われる。
5. まとめ
我が国の2050年までのCO2排出量を、エネルギー需給構造の変化を想定して、エネルギー需要を部門別に試算し、エネルギー供給をバランスさせ、解析するWindows用ソフトウェア「NICEモデル」を開発した。
NICEモデルは、エネルギー需要と電力供給に関して、種々の組合せのシナリオを設定し、その条件下でのCO2排出量を試算することで、各部門の将来的な変化が我が国全体のエネルギー需給およびCO2排出量に与える影響を分析するためのツールである。
現状では、部門間の相互関係、産業部門の生産量とGDP成長率の関係、化石燃料の賦存量による制約や価格の高騰などが考慮されていない欠点を持つ。しかし、今後の改良により、従来それぞれの部門別に行われていた解析を総合的に組み合わせ、ある部門に導入される技術の全体への寄与を分析するソフトウエアに成長させることが可能である。
NICEモデルで算出されるCO2排出量は、各部門での排出シナリオの総和である。NICEモデルの開発の目的は、個々の部門別シナリオを構成する技術の導入量などのシナリオが全体に及ぼす影響を分析することにある。
一般に、将来のエネルギー需給構造は、技術開発とその導入、政策などに大きく影響される。したがって、モデルでの計算結果はCO2排出量の予想ではなく、シナリオに基づく試算結果であることに注意するべきである。
NICEモデルはエネルギー需要を積み上げ、供給をバランスさせる、新たな解析手法で、まだ開発の初期段階にある。今後さらに検討を加え、よりよい需給モデルとしたい。
6. 参考文献
1)資源環境技術総合研究所:「二酸化炭素の排出を考慮した我が国のエネルギー将来展望」調査研究報告書(1996)
2)資源環境技術総合研究所:「二酸化炭素の排出を考慮した我が国のエネルギー将来展望」調査研究報告書(1997)
3)平成6年度版環境白書(1996)
4)平成6年鉄鋼統計年報(1995)
5)平成7年紙パルプ統計年報(1996)
6)総合エネルギー統計(平成7年度版)(1995)
7)石福昭、梅主洋一郎、事務所ビルにおける環境配慮対策試算例、日本建築学会地球環境特別研究委員会(1995)
8)柳井春夫、高根芳雄:「新版多変量解析法」(1985)
9)A.L.コムリー:「因子分析入門」(1973)
10)原子力委員会編:平成6年度原子力白書(1995)
11)太陽光発電技術研究組合:「太陽光発電評価の調査研究」、平成6年度NEDO委託業務成果報告書
12)電力行政の現状と課題、総務庁行政監察局編
| National Institute for Resources and Environment |
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