二酸化炭素排出を考慮した
我が国のエネルギー将来展望の
調査研究報告書 II
平成9年3月
はじめに
調査の目的
近年、化石燃料の消費に伴うCO2の排出が主たる原因とされる地球温暖化が問題となっている。本年(1997年)12月には気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)が京都で開催され、2000年以降の温暖化対策の取り組みについて議論される予定となっている。
CO2の排出抑制のためには、省エネルギー・新エネルギー技術の開発とその導入が不可欠であると考えられる。当所は従来よりこれらの技術開発を推進してきたが、研究者の特質として担当技術の分野に埋没することが多く、いわゆる「木を見て森を見ず」の傾向があったことは否めない。
本調査は、技術開発および導入によるCO2排出抑制の可能性を考察することを目的とし、その基礎となるわが国の2050年のエネルギー需給構造について検討するものである。平成7年度に、産業、交通、民生の各部門の長期的エネルギー需要、および発電技術の開発について調査し、エネルギー利用システムの上流にあたるエネルギー供給と下流となるエネルギー需要の両面から解析を行った。平成8年度は、平成7年度の調査の精査に努めると同時に、調査・分析結果を基にして西暦2050年のCO2排出量を算出するためにソフトウェア「NICE:NIRE CO2 Emission Model」の開発を行った。このソフトウェアを利用することで、従来それぞれの部門別に行われていた分析を総合的に組み合わせることが可能となった。
エネルギー需給構造は単にエネルギー技術の導入により決定されるものではなく、産業構造の変化および経済状況により変化すると考えられ、技術開発に携わる研究者には手に余る検討項目が多い。その結果として、開発されたソフトウェアも部門別の統合化およびマクロ経済指標との関係が十分に整理されているとは言い難い。そのような点については関係者の協力を得て、今後さらに勉強を進めて行きたいと考えている。
調査体制
統括研究調査官室 統括研究調査官 城戸 伸夫
熱エネルギー利用技術部 熱利用研究室 室長 山崎 正和
熱利用研究室 松本 成司
大気圏環墳保全部 大気計測研究室 室長 大井 明彦
環境影響予測部 大気環境予測研究室 近藤 裕昭
エネルギー資源部 燃料物性研究室 室長 稲葉 敦(主査)
燃料物性研究室 近藤 康彦
ガス化研究室 小林 光雄
(統括研究調査官室 研究調査官)
素材資源部 素材物性研究室 大矢 仁史
安全工学部 安全システム研究室 匂坂 正幸
(統括研究調査官室 研究調査官)
財団法人 地球環境産業技術研究機構 八木田 浩史
二酸化炭素排出を考慮した我が国のエネルギー将来展望の調査研究報告書 II
概 要
本年度は、平成7年度の調査を精査するとともに、それに基づいてわが国の西暦2050年のCO2排出を算出する手法をソフトウェアとして具現化するために、以下のように検討を進めた。
まず、第1章ではCO2排出量を算出する手法を検討した。以下に述べるそれぞれの調査項目を整合性があるように総合化し、2050年のCO2排出量を算出するためのソフトウェア「NICE:NIRE CO2 Emission Model」の基本的な計算手法を検討した。本手法では、部門別に積み上げられたエネルギー需要を、自然エネルギーと原子力エネルギー、並びに化石エネルギーで分担することが基本となっている。
第2章では、エネルギー需要を考察する上で重要な因子と考えられるGDPと人口の変遷と外部機関による将来の見通しを調査した。
第3章では産業部門のエネルギー需要について検討した。産業部門のエネルギー需要は産業構造の変化により大きく変動することが想定され、産業構造の変化をどのように見通すかが議論の焦点となった。その結果、現状でのエネルギー消費量が大きい鉄鋼、窯業・土石、紙・パルプ、化学産業に着目し、鉄鋼について利用業種である自動車および鉄鋼製品の輸出量の変動を産業構造の変化の代用とする手法を取り込むこととした。窯業・土石は建設業の代表としての新築家屋の着工数からセメントの需要を見積もることとし、紙・パルプは古紙回収率の増加を織り込むこととした。化学産業については変動要因の分析を十分に行うことが困難であり、マクロな成長率を想定せざる得なかった。上記の4産業以外の製造業については現状維持とした。
第4章では民生部門のエネルギー消費量を推計した。業務用については一人あたりのGDPと各燃料種の消費量の相関を求め、2050年の消費量を推定した。家庭用については、断熱材を用いた省エネルギー住宅の普及、および家庭内のエネルギー機器の導入とエネルギー効率の向上を見込んでエネルギー消費量を推定した。家庭用エネルギー消費については可処分所得、消費者物価指数、燃料価格などに基づく詳細な分析例があり、それを利用しつつエネルギー需要の上限を推定する新たな考え方を導入した。
第5章では運輸部門のエネルギー消費量を検討した。運輸部門のエネルギー消費量の積算には、旅客人キロおよび貨物トンキロの見通しが必要となる。これらを民間最終消費支出の見通しを基に試算することにした。また、代替燃料車の導入を考察した。
第6章では、エネルギー供給技術として重要である発電技術の開発および導入見通しについて検討した。特に非化石燃料発電技術については、自然状況および技術的課題を勘案しての導入ポテンシャルを検討した。
また、付録として以上の検討結果をまとめるソフトウェア「NICE」の使用法を記載した。NICEは、分析の前提条件となるシナリオに基づき選択可能なパラメータを設定し、それらの組み合わせでCO2排出量が算出されるように工夫されている。CO2排出量は前提条件(シナリオ)により変化する。計算結果は、2050年までのCO2排出量の予測を示すものではない。現在の計算方法の特徴を把握するための試行結果が示されるにすぎない。しかし、「NICE」を用いてパラメータの感度を分析することにより、CO2の排出量を算出する現状の計算方法の限界と課題を把握することができる。
本調査では需要と供給をそれぞれ単独で検討している。現状では、需要を基礎に考えているので需要分だけの供給がなければならないことになる。今後、供給量に見合う輸入が可能であるかどうかの検討が必要となろう。平成7年度の調査では、石油価格の高騰の可能性が示唆されている。石油供給量を決定する手法が必要と思われる。また、石油価格によっては、他の化石燃料からのエネルギー変換技術の利用も考えられる。本年度の調査では、エネルギー転換技術について言及することができなかったが、価格による化石燃料の輸入可能量の検討とそれに伴う変換技術の検討が必要であろう。
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