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乾燥指数と植生指数による
土壌劣化地域の分類




 気候は年乾燥指数で代表させ、植生は年最大正規化植生指数NDVIymaxで代表させて、両者の2次元面での分布から、乾燥地域の分類を試みてきた。ここでは乾燥指数についてもう少し、掘り下げてみる。乾燥指数AIは湿潤指数とも言えるが、降水量/可能蒸発散量で表わされる。可能蒸発散量は推定するしかない量で、種々の求め方が提案されている。放射収支量(Penman式など)や、有効放射量を使用する近藤と徐式(1997)などは理論経験式であるが、必要なパラメータが多く、乾燥域での適用は難しい。気温だけの経験式であるThornthwaite式は作成された北米地域では良好でも、他の中緯度地域での摘要は注意が必要である。ましてや、熱帯亜熱帯地域、寒帯での使用は難しい。一般に可能蒸発散量は熱帯・亜熱帯地域では過小評価であり、寒帯・湿潤地域は過大評価となるとされている。近藤と徐による気候湿潤度WI(乾燥指数に相当する)との比較を図1に示す。.

図1 温度から求めた乾燥指数 (年降水量/Thornthwaiteによる可能蒸発散量) とKondo & Xu(1997)による有効放射量から求めたWetness Index (乾燥指数に相当) との比較
図1 温度から求めた乾燥指数 (年降水量/Thornthwaiteによる可能蒸発散量) とKondo & Xu(1997)による有効放射量から求めたWetness Index (乾燥指数に相当) との比較

 乾燥域では、AIが過大評価(可能蒸発散量では過小評価)になっていることが示されている。UNEPによるAtlas of Desertificationでは、Thornthwaite法とPenman法との比較から得られた変換式(Hulme他,1992)により求められた乾燥指数を使用して乾燥域を分類している。図2にこの方法によるPenman法に引き直された乾燥指数とWIの比較を示す。Thornthwaite法によるAI の過大評価がかなり改善される。修正した乾燥指数のアジアアフリカ域による分布を図3に示す。.
図2 Thornthwait法とPenman法 (放射収支量などを使用) と比較して、Thornthwait法からPenman法での値に直された乾燥指数とWetness Index の関係
図2 Thornthwait法とPenman法 (放射収支量などを使用) と比較して、Thornthwait法からPenman法での値に直された乾燥指数とWetness Index の関係
(Hulme(1992)  PETpenman=1.30xPETThornthwait-0.43x降雨量+246、 PET:可能蒸発散量
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図3 乾燥指数AIの分布(アジアアフリカ地域)
図3 乾燥指数AIの分布(アジアアフリカ地域)


 一方、植生指数もいろいろ問題がある。裸地のみえる乾燥域の植生指数は、本来の意味の植生指数ではない。ただ、植生指数は緑が多いと飽和してくるが、乾燥域は激しい沙漠のほぼ零に近い値から、草原の0.6ほどの値まで広く分布している。このことは、植生指数としての本来の意味を失っていても、乾燥域を分類するのに有効な指数であることが期待される。植生指数は裸地の見える乾燥地では土の明暗による影響を最小にするようにした土壌調節正規化植生指数SAVI(Huete,1988),MSAVI(Qi et al.,1994)などを使用する方がよいといわれている。pathfinderによるNDVIとMSAVIの年最大値の比較を図4に示した。植生指数の精度も、この程度のラフな値である。しかし、土壌調節正規化植生指数もまだ確立した方法というわけではないので、一般に使われている、NDVIをここでは使用する。乾燥域における年最大NDVIの分布例を図5に示す。.
図4 修正土壌調節正規化植生指数(MSAVI)と正規植生指数NDVIの比較(年最大値)
図4 修正土壌調節正規化植生指数(MSAVI)と正規植生指数NDVIの比較(年最大値)
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図5 pathfinderによるNDVIymaxによる乾燥地域の分類(アジアアフリカ地域)
図5 pathfinderによるNDVIymaxによる乾燥地域の分類(アジアアフリカ地域



 従来、乾燥指数、植生指数それぞれで乾燥域の分類が行なわれてきた。ここでは、両者を2次元図(図6)でみることにより、新たな乾燥域の情報が得られることを示す。乾燥域(UNEPの定義ではAI<0.5)では乾燥指数と植生指数の間に直線関係(ばらつきは大きい)が認められる。0<AI<0.5とNDVIymax<0.55の範囲で回帰直線を求めると図6のラインb0となる。ラインb0より左側では乾燥の割には植生のよい地域であり、右側は湿潤なわりには植生の悪い地域を示すと考えられる。具体的データ(図7)と比較すると、乾燥の割には植生のよい地域、すなわち、灌漑地域やオアシスはラインaより左のI分類に一致する。灌漑地域やオアシスは一般の地図から確かめることができる。一致度は非常によい。なお、Aは激しい沙漠、Hは緑豊かな地域である。.

図6 年乾燥指数AIと年最大植生指数NDVIymaxの関係
図6 年乾燥指数AIと年最大植生指数NDVIymaxの関係

  A:激しい沙漠
  L:AIとNDVIymaxが直線関係にある地域
  I:乾燥の割に植生のよい地域(灌漑地域やオアシス)
  S:湿潤な割に植生の悪い地域(土壌荒廃地域の可能性あり)
  H:緑の豊かな地域
  a:NDVIymax=3.0AI
  0(回帰直線) :NDVIymax=1.01AI+0.07   σe=0.13
                   =0.75(1%)
  1:NDVIymax=1.01AI+0.07-0.5σe
  2:NDVIymax=1.01AI+0.07-σe
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図7 図6で分布されたクラスの分布
図7 図6で分布されたクラスの分布
 

 湿潤なわりには植生の悪い、土壌劣化地域の可能性のあるS(だいだい色の地域)はラインb0の右側で示されるようである。この土壌劣化地域Sは簡単には確かめようはない。が、以下の2つの検討をしてみる。図8に示される多数の土壌専門家により作成された土壌劣化地域分布(GLASOD)と比較すると、かなりの地域で、S地域と土壌荒廃地域が一致する。
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図8 UNEPのGLASODによる土壌劣化地域の分布
図8 UNEPのGLASODによる土壌劣化地域の分布


 もう一つの確かめる方法は、NDVIymaxの長年(12年間)の標準偏差(図9)と比較することである。半乾燥域は旱魃が繰り返し起るが、雨が戻ると植生は復活する。しかし、土壌荒廃した地域は、降水量があっても、植生に結び付かないと考えられる。そのため、標準偏差の小さい半乾燥域は土壌荒廃地域の可能性があると思われる。サヘル地域のニジェールーブルキナファソーマリ地域やオルドスー黄土高原などはS分類と一致する。図6で回帰直線のクラスS 側では回帰直線からはなれるほど、土壌が荒廃していると予想される。その距離を標準誤差で表わせば、土壌の荒廃指数といえるかもしれない。世界の乾燥域での土壌荒廃地域を、?=1,3/4,1/2,1/4,0と基準の厳しい条件から緩い条件まで並べた。図10はアジア・北アフリカ地域,図11は南アフリカ,図12は豪州,図13は南北アメリカを示す。各地域毎の土壌劣化の程度が定量的に読み取れる。また、地域間でみると、各地域の土壌劣化の比較が可能となる。土壌劣化地域分布(GLASOD)と比較すると、それぞれの地域に判定の基準に違いが認められる(ただし、土壌劣化が乾燥指数と植生指数だけで単純に表わされると仮定できれば)。
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図9 NDVIymaxの標準偏差(1982-1993年)
図9 NDVIymaxの標準偏差(1982-1993年)

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図10 標準誤差による土壌劣化地域の分布 (Asia North Africa)
図10 標準誤差による土壌劣化地域の分布 (Asia North Africa)

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図11 標準誤差による土壌劣化地域の分布 (South Africa)
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図12 標準誤差による土壌劣化地域の分布(Australia)
図12 標準誤差による土壌劣化地域の分布(Australia)
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図13 標準誤差による土壌劣化地域の分布 (North and South America)
図13 標準誤差による土壌劣化地域の分布 (North and South America)



(蒲生稔,篠田雅人,管野達彦 2000:植生と気候を考慮して作成された土壌劣化指数 日本沙漠学会予稿集から作成。)


参考  NIREニュ−ス1999年11月(植生と気候による沙漠化地域の特定)
GAMO minoru 2000 ・ Identification of Soil Degradation Areas Based on
           Vegetation Index and Aridity Index Green Age 19,6-10
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